最適な雇用主として選ばれたいと願う企業は、時間を通貨のように扱うことを学ぼうとしている。その方法として、在宅勤務、時差勤務、パートタイムやワークシェアリング、限定的な長期休暇(ミニ・サバティカル)などの制度が挙げられる。アメリカン・エキスプレスの国際人事部上級副社長、ケリー・ペライノは言う。「フレキシビリティの提供は、雇用主としての競争力を高めるうえできわめて重要です」

 在宅勤務などを含むフレックス勤務は、雇用主に数々の低コスト・高リターンのメリットをもたらす。最も明らかな見返りは、従業員が電話や会議など職場のさまざまな雑事に邪魔されず、仕事に集中できることだ。フレキシビリティは有能な人材を引きつける武器となるだけではない。多様で新しい人材のニーズを満たすことによって、彼らを自社に繋ぎ止めることができる。

 フレックス・タイムの成功例は、シティ・グループの「ワーク・ストラテジー」プログラムだ。これはもともと、環境に優しく、コスト効率が高く、従業員が働きやすい未来の職場を構築するモデルとしてスタートしたものだ。しかし間もなく、柔軟な就労形態を望む大勢の従業員にとって有益な制度となった。同社はある時、誰も使っていないオフィス空間が無駄になっていることに気づいた。そこで担当部門は、オフィスの共有、サテライト・オフィスに宿泊できる「ホテリング」、自宅作業などの制度を提案し、同社の不動産ポートフォリオの縮小を図った。

 以来、このプログラムはパートタイム就業、在宅勤務、始業・終業時間のフレックス化、勤務スケジュールの圧縮、ワークシェアリングなどを含むものに発展している。この制度への申請手続きとして、勤務計画の作成が求められる。新たなフレックス勤務によってどのように仕事をするか、クライアントやチーム・メンバーにどう影響するのか、そしてどの技術が必要になるのか(ウェブカメラ、インスタント・メッセージ、テレビ会議など)を記し提出する。同時に、マネジャーは在宅勤務に就くチームを指揮・監督するための訓練を受ける。シティが毎年行う従業員調査によれば、フレックス勤務の従事者は一貫して、仕事への意欲と会社への定着率が高く、自社を働きやすい職場として推薦する傾向も強いという。

 企業がY世代の従業員に柔軟な選択肢を提供し、彼らの能力を最大限引き出すには、ほかにどの方法が考えられるだろうか。Y世代のフレックス勤務を管理したことがあれば、その経験を教えてほしい。


HBR.ORG原文:Ys Just Wanna Have Fun (and Flexibility) June 3, 2011

 

シルビア・アン・ヒューレット(Sylvia Ann Hewlett)
非営利の研究機関、センター・フォー・ワークライフ・ポリシーの創設者、所長兼エコノミスト。