ハーバード・ビジネス・レビューでは、毎月、講師をお迎えして勉強会を開催している。著名な講師を囲み、少人数によるディスカッションを中心とした勉強会は、魅力と活力にあふれた会として好評だ。今回はネスレ日本の高岡浩三氏を講師に迎え、「消費者はデータから見えるか?」というテーマで、プレゼンテーションを行っていただいた。


【テーマ】「消費者はデータから見えるか?」
【 講師 】高岡 浩三氏(ネスレ日本 代表取締役社長兼CEO)
【 日時 】2013年10月1日(火) 19時~20時30分
【 場所 】d-labo コミュニケーションスペース(ミッドタウン・タワー7階)

 

DHBR勉強会について

 ハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)では、毎月1度、講師をお迎えして勉強会を開催しています。この勉強会は、DHBR誌に寄稿いただいた方を中心に講師としてお招きし、各回のテーマに沿ったプレゼンテーションの後、参加者の方々とディスカッションを行う形式をとっています。

写真を拡大
まずは自己紹介

アットホームな会場、20名という少人数、隔たりのない講師の方との近さという贅沢な空間が、ほかにはない活発な議論を誘い、これまで参加いただいた方々からも好評をいただいております。また、参加者の年齢や職種も幅広い層にまたがっており、大変刺激的な会となっています。

ネスレは自宅をカフェにした

 今回のテーマは「マーケティング」。講師にはネスレ日本 代表取締役社長兼CEOの高岡浩三氏をお招きし、<ネスカフェ ドルチェ グスト>の事例とともに、マーケティングの目的と、そのために必要なことについて、お話しいただきました。
 まず、マーケティングがどのような現状にあるのか。

「マーケティングとは何か、というのは永遠の命題だ」という言葉とともにプレゼンテーションが始まりました。一時期POSデータがもてはやされ、「これで顧客行動が分かる」といったように騒がれたものの、当時と今でほとんど変わっていない現状(むしろ先進諸国と比較すると遅れている)から、ビッグデータが騒がれている今日にあっても、数字データがマーケティングの問題を全て解決するわけではない、という考えを示されました。
 次にコーヒーシーンを取り巻く環境の変化に目を移すと、大手カフェ・チェーンが世界を席巻し、お店でコーヒーを楽しむ新たな文化が生まれました。そうしたトレンドの変化から生まれた新たなニーズ、すなわち「あのコーヒーを自宅で飲みたい」という顧客の欲求を満たすもの、それが<ネスカフェ ドルチェ グスト>でした。

マーケティングは顧客にとって最大の価値をつくること

 事前の消費者調査では、<ネスカフェ ドルチェ グスト>を置くのはキッチン周りが大半だと考えられましたが、実際には半数近くの人がリビングに置いていました。これは「人に自慢したくなる」意識のあらわれであり、これは事前調査からは分からなかった点でした。人間というのは、自分の思っていることを全てさらけ出すとは限りません。その人間が本当に思っていること、その本質を見通すことがマーケティングの仕事なのです。
 <ネスカフェ ドルチェ グスト>が売れた一番の要素。それはデザインでした。このマシンを見てもらいたい、自分の新しいスタイルを見てもらいたい、という隠れた欲求がヒットする要因となったのです。実際、このマシンをリビングに置くことで、来客に好みの味を選択してもらい、自分で淹れてもらうという、素晴らしいデモンストレーションが顧客自身によってなされるようになりました。
 マーケティングとは、顧客にとって最大の価値をつくることであり、その価値の本質を見通す力がマーケティングに求められていると述べられました。