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戦略論の進化と価値獲得モデルの登場
ピーター・ドラッカーは著書『イノベーションと企業家精神』[注1]で、知識によるイノベーションを基盤とする産業について次のように考察した。「いまにもイノベーションが起こりそうで起きない期間が長期にわたって続く。そして突然、爆発が起こる。数年にわたる開放期は大いに盛り上がり、興奮と乱立が見られ脚光が当てられる。やがて淘汰期が始まり、ごくわずかだけが生き残る」
ドラッカーによると、知識によるイノベーションの問題点は、「一つの知識に基づいて成立することはほとんどなく、いくつかの異なるタイプの知識を結合した上に成立する」ことである。画期的な発明があると、それを契機にさまざまな動きが生じるが、必要なすべての要素がそろわなければ有意義な進歩は実現しない。
私はドラッカーの主張の真価を科学的に立証することはできないが、戦略という分野の描写としてはきわめて的確だと考える。この分野が生まれた当初は厳密なものではなく、その内容はSWOT分析のような常識的なアプローチや、ボストンコンサルティンググループが開発したBCGマトリックスなどのフレームワークに依拠していた。