企業が本当に必要としているのは、単に満足度の高い従業員ではなく、その企業で働くことが大好きで、商品やサービスを愛し、顧客を喜ばせることに自身の喜びを見出せるような、情熱あふれる従業員である。ベイン・アンド・カンパニーの好評連載、第6回は、従業員エンゲージメントの本質を説く。


 ほとんどの企業は、それなりの理由があって、情熱的でエンゲージメント(愛着心)の高い従業員を求めている。従業員のエンゲージメント度合いと財務的成果は関連性がある。例えば、エーオン・ヒューイットの最近の研究によるとエンゲージメントレベルが高い従業員を抱える企業の2010年の株価上昇率は、市場全体を上回ったという。

 一方、ギャラップの調査によると、典型的な企業では70%以上の従業員が「エンゲージメントがない」もしくは「意図的にエンゲージしないようにしている」ようだ。

 この失敗の背景にある理由は何だろうか? 私の見解では、つまるところ、企業がエンゲージメントを促進するために行なっている努力と、従業員にとって真に刺激的で動機付けとなる事柄との間に驚くべきズレが存在することが原因である。

 ほとんどの企業では、人事部が従業員エンゲージメントの「責任を負い」測定している。たいていは年に1度、従業員を萎縮させるような長さの一連の質問を投げかける--薬の保険給付が十分かどうかという内容から、職場に「親友」がいるかどうかを問う質問まで多岐にわたる。長ったらしい分析の結果出されたレポートは、福利厚生の改善、「上司によるコーチング」、または本社スタッフによって取り扱われるような施策へとつながる。

 このアプローチは、かつてほとんどの企業が顧客に対応していた方法とそっくりである。マーケティングもしくは顧客サービス部門が顧客満足の責任を負い、その改善にあたっては伝統的なスタッフ向けツール(トレーニングプログラムのような)に依存し、成功を古典的な満足調査によって測定する、というものだ。

 しかしながら、近年はザッポスやアップルのような先進的企業が、素晴らしい顧客体験を創り出すための改革を主導している。

 彼らは、顧客に喜んでもらうことを本社の中心メンバーだけでなく、現場のすべての従業員の最優先事項に位置づけている。稀にしか実施しない満足度調査の代わりに、常に顧客にフィードバックを求めている。

 これらの企業は、一般的に短くて簡潔な調査票を使っている。評点や回答の一言一句を現場の従業員やその上司と迅速に共有し、不満に思っている顧客に対してすぐにフォローし、可能な限り問題を解決できるようにする。そして一連の「クローズド・ループ」を日々の業務に採り入れ、継続的に改善するようにしているのだ。

 努力を惜しまない企業には、深く長期的な顧客ロイヤルティがもたらされる。顧客は、その企業からより多く購入し、より長く継続して利用し、友人に薦めるだけではなく、その企業がフィードバックを大切にするという認識を持っているため、改善のためのアイデアも提供してくれるようになる。