よい会社とは何か。2008年にオンライン上で記録を保持するクラウド・サービス〈エバーノート〉を開始、またたく間に世界7500万人のユーザー数を抱えるまでに成長した同社は、親日家として知られる創業者フィル・リービンの下、シリコンバレー企業には珍しく、自社を100年続く企業にしたいと「100年スタートアップ」を目標に掲げている。それはなぜか。実現のために何に気をつけているか。「無期限休暇」など社員への手厚い特典で知られる一方、その底流に流れるのは、生産性を管理するのは会社ではなく社員自身であるという、強烈な自主自律の精神であった。それは、信頼と企業文化は紙一重であるからだ。顧客から信頼を得られるか否かは、製品のみならず会社の姿勢にかかってくる。同社の哲学をリービン氏に聞く。

リソースに制限されずに機会を追求し続ける

編集部(以下色文字):エバーノートが最初のサービスを開始したのは2008年ですが、すでに100年続く企業、しかも新興企業のようなイノベーションを続けていく状態を目標にしているそうですね。

リービン(以下略):「企業文化」を確立するのは大変難しいことで、私が心を砕く時間のほとんどはそこに費やされています。「100年スタートアップ」というのは、100年続くような永続性のある組織をつくりたい、けれどもただ存続しているだけではなくて、常に革新を起こし、勇気ある決断を下し、人々が愛する製品を生み出し、みんなが働きたいと思うような企業にしたいということです。