もはや終身雇用は成り立たない

 20世紀のほとんどの期間、先進国において雇用者と被雇用者の間で交わされた協定は、要するに安定性が最も重要視された。大企業では雇用が保証されており、その会社が財務的に問題なく、従業員が自分の仕事をこなしている限り、職が失われることはなかった。そしてホワイトカラーの世界では、キャリアは一種、エスカレーターのように進むものであり、社内ルールに従う従業員はお約束通り昇進し、企業の側は、従業員の忠誠心と低い離職率を享受できた。

 そしてグローバリゼーションと情報化時代の到来とともに、安定性は急激で予測できない変化に取って代わられた。適応力と起業家精神こそが、成功を成し遂げ、それを維持するための秘訣となった。この変化によってアメリカの民間セクターでは、伝統的な雇用者─被雇用者間の協定、およびそれに伴うキャリア・エスカレーターが完全に破壊されたのである。他の国においても、この変化によりさまざまなレベルの混乱が起きている。

 この問題を指摘したり、解決策を示したりするのは我々が初めてではない。だが、いままでに示された新しい対策でしっかり根づいたものは一つもない。多くの──おそらくほとんどの──企業は、よりよい雇用協定を生み出すのではなく、既存の協定を最小化することで適応力を高めようとしてきた。コスト削減が必要か。では従業員を解雇しよう。新しいスキルが必要か。では別の人材を採用しようという具合だ。