本誌2013年12月号(11月9日発売)の特集は「理想の会社」。HBR.orgの関連記事第4回は、フィードバックの与え方に関する研究報告を取り上げる。リーダーがネガティブで批判的なフィードバックを与えると、部下の意欲を減退させる、とよく言われている。しかしこの認識は正しいとはいえず、相手が熟練者の場合は逆効果になるという。
同僚や部下(さらに言えば、自分の子供)に対してフィードバックを与える時に、決して「批判的」あるいは「ネガティブ」になってはいけない――。
私はこうした論調の記事やブログをあと1つでも見たら、頭が爆発すると思う。非常に苛立たしい。
この種のアドバイスはもちろん善意によるもので、たしかに響きもよい。結局のところ、誰かの行動がどう誤っているかを当人に指摘するのは楽しいものではない。少なくとも、関係する全員にとって少し気詰まりな行為ではある。
しかし、ネガティブなフィードバックを避けることは間違いであり、危険でもある。間違いなのは、批判は適切な方法とタイミングで与えられれば、モチベーションを大きく高めるからだ。
危険なのは、間違いに気づかなければ、誰も進歩しない。フィードバックを与える時に「ポジティブ」であり続けたら、それなりの結果しか出せないだろう。
「ちょっと待って。ネガティブなフィードバックは、相手を落胆させるのでは? モチベーションを削いでしまうのではないか?」こうあなたは言うだろう。
その通りだ。
「自信を持つには、励まされることが必要でしょう? それによってモチベーションを維持できるのでは?」
多くの場合、答えはイエスだ。
こう聞くと混乱するだろう。しかし、ステイシー・フィンケルシュタイン(コロンビア大学准教授)とアイエレット・フィッシュバック(シカゴ大学教授)による最近の素晴らしい研究のおかげで、一見矛盾するように見えるフィードバックの性質が明らかになってきた。両者の研究は、どんな理由で、いつ、誰を相手にネガティブなフィードバックを行うのが適切かを明確にしている。
まず、ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバックそれぞれが果たす機能を理解することが大切だ。ポジティブなフィードバック(例:「この部分は、素晴らしい仕事ぶりですね」など)は、取り組んでいる仕事への意欲を高める。経験と自信の両方を強化するからだ。
一方で、ネガティブなフィードバック(例:「ここで間違ったのですよ」など)は情報を提供する。どの部分で努力すべきかを伝え、どうすれば向上できるかについてヒントを与えることになる。
このような違いをふまえれば、相手と状況によって両方を使い分けるほうが効果はある(かつモチベーションを高める)はずだ。
たとえば、自分の仕事を完全に把握していない段階では、ポジティブなフィードバックをもらうと楽観的になることができ、目の前の課題に対しても気楽に構えられる。これらは初心者に必要である場合が多い。
しかし、仕事をおおむね理解している熟練者に対しては、そうではない。ネガティブなフィードバックこそが、その仕事を極めるための努力を支える。