フィンケルシュタインとフィッシュバックによると、初心者と熟練者は異なる種類の情報を求めており、動機付けされる情報も異なる。

 2人は研究のなかで、フランス語を学んでいるアメリカ人を対象に調査を行った。初心者クラスと上級者クラスの受講者それぞれに、こう質問した――正しい部分を指摘してくれる(強みにフォーカスする)講師と、間違った部分を指摘してくれる(間違いと、どう直すべきかにフォーカスする)講師のどちらがいいか。初心者は圧倒的に前者を好んみ、上級者クラスの生徒は後者を好んだ。

 2人の研究者は次に、環境保護に取り組む人々というまったく異なる対象を調べた。ここでの熟練者は環境団体(グリーンピースなど)のメンバーであり、初心者はメンバーではない人々だ。

 研究への参加者は、それぞれが環境保護のために日頃行っている行動のリストをつくった。たとえば、リサイクルする、ボトル入りの水を買わない、シャワーの時間を短くするなどだ。

 環境コンサルタントがそれらの行動の有効性についてフィードバックを行い、そのあとで参加者は次の選択肢を与えられた――あなたの行動のうち、効果のあるものについて詳しく知りたいか、あるいは、効果のないものについて詳しく知りたいか。熟練者は初心者に比べ、ネガティブなフィードバック――効果のない行動について知ること――を選ぶ傾向がずっと強かった。

 以上の研究結果が示しているのは、ある分野で経験を積んだ人々――すでにある程度の知識やスキルを身に付けた人々――は、ネガティブなフィードバックを恐れていないということだ。

 ネガティブな部分があれば、彼らはそれを知ろうと求める。ネガティブなフィードバックが前進へのカギであることを、直感的に知っているのだ。そしてポジティブなフィードバックはせいぜい、すでに知っていることの指摘にすぎないということもわかっている。

 では、モチベーションについてはどうだろう? どんなフィードバックであれば、行動を喚起するのだろうか。

 前述の環境保護に関する研究を見てみよう。まず参加者に、それぞれの環境への取り組みに対して、ポジティブまたはネガティブなフィードバックをランダムに与えた。そして、研究への参加報酬25ドルのうち、何ドルをグリーンピースに寄付したいかを尋ねた。すると、フィードバックの質が寄付へのモチベーションを大きく左右したのである。

 ネガティブなフィードバックを与えられた場合、熟練者はグリーンピースに対し平均で8.53ドルを寄付し、初心者の1.24ドルよりずっと多かった。しかし、ポジティブなフィードバックを与えられた場合は、初心者が8.31ドルを寄付したのに対し、熟練者が2.92ドルだった。

 念のために言っておくと、私は、新人には間違いを指摘するなと提案しているのではない。また、経験を積んだ専門家の優れた仕事ぶりを称賛すべきではない、と主張したいわけでもない。そしてもちろん、ネガティブなフィードバックは常に、よきアドバイスと一緒に提供し、気配りもするべきだ。

 しかし、私はこう提案したい。たくさんの褒め言葉は、プロよりも新人のモチベーション向上に効果がある。そして、経験豊かな人に対して間違いを指摘することを、それほど恐れるべきではない。

 ネガティブなフィードバックが、彼らの自信を損ねることはない。彼らの実績を次のレベルへと押し上げるために、必要な情報を提供しているのだ。

HBR.org原文:Sometimes Negative Feedback is Best January 28, 2013