顧客指標は売上やキャッシュフローなど「信頼できる確実な」数字とほとんどつながりがなく、「曖昧」な数字であると見なされてきた。しかし現実には、意思決定に欠かせない重要な数字である。ベイン・アンド・カンパニーの好評連載、第10回。
「世界のCEOの4分の3は、知的財産や顧客との関連性などの非財務的資産を測定することについての優先度を上げなければならないと考えている。」
これは、企業会計協会(Chartered Institute of Management Accountants)と米国CPA協会(American Institute of CPAs)による最近の研究において見出しとなった研究結果である。研究主体の性質を考えると、陸軍が軍艦の必要性を主張しているようなものだ。控えめに言ったとしても、予想外だということだ。
しかしここは、CEO達が言及している根本的な不均衡を認識した会計専門家達の功績を認めるとしよう。企業は、財務の数字を追うことに何時間も費やす。資産、負債、売上、コスト、そしてキャッシュフロー。だが、ほとんどの企業は、究極的には経済的価値を創出する顧客との関連性を評価することにはほとんど真剣に時間を費やさない。
もしかしたら、それは顧客指標が長い間売上やキャッシュフローなどの「信頼できる確実な」数字とほとんどつながりがなく「曖昧」な数字であると見なされてきた結果かもしれない。それでいて、世界中の企業が顧客指標を「信頼できる確実な」ものにする必要があり、この不均衡を是正する必要があるということに気づき始めている。例えば、多くの企業は顧客に対して友人や同僚に企業や商品を薦める可能性はどのくらいあるかを聞く調査を頻繁に実施している。その調査は、顧客が将来取り得る行動に関するデータを絶え間なく提供してくれる。企業のリーダーは、財務的結果を追うのと同じようにこのデータを毎週確認する。そして、他の企業が財務レポートを活用するのと同じ方法でこれを利用する――業務上そして投資上の意思決定のために。簡単に言うと、それは彼らの主なマネジメントツールなのだ。
例えば、チャールズ「チャック」シュワブは、当時問題を抱えていたチャールズ・シュワブ社の舵取りをするために同社に復帰した後、この調査を使った仕組みを導入した。今日、同社は不均衡の問題で苦戦することはなくなった。チャック・シュワブとCEOのウォルト・ベッティンガーは、証券アナリストとともに顧客指標に関する定期的な議論の場を持ち、その中で推奨者と批判者の経済価値を定量化する分析も行った。また、同社の役員会は、鍵となる事業指標のレポートの中にこの指標を組み込んだ。