急成長を遂げていたラックスペースでは、CEOのラナム・ネピアが毎朝必ず顧客調査データを見ていた。ラックスペースは2008年に上場した――金融市場が暴落する直前だ。財務結果に関わらず、ラックスペースを含む多くの企業の株価が急落した。これに対するラックスペースの反応は、「熱狂的なサポート」と呼ぶ顧客へのこだわりを2倍にすることだった。価格変更、現場で電話応対する社員の機能横断的なチームへの再編、顧客のフィードバックを収集しそれに対して行動するための最先端のプロセスを構築すること等を含む、幅広い顧客主義の施策を開始した。結果はどうだったか?他社へ乗り換える顧客は3分の1以上減少し、同社は二桁成長を続け、過去数年の間に株価が10 倍になった。ラックスペースの取締役会は、伝統的な財務指標よりも戦略的な成功をより明確に(そして将来を見越す方法で)測定できることから、会社のネット・プロモーター・スコア(NPS)を競合のものと比較するようにしている。
グローバルに展開するコングロマリット企業であるフィリップスも、顧客フィードバックの評点が成長を測定するために信頼性の高い指標であることに気づいた。同社の照明事業の個別アカウントを研究すると、評点が上昇している顧客の売上は69%伸び、評点が一定の顧客は6%しか伸びていないことが分かった。評点が下落している顧客は売上が24%も低下していた。更に、業界内でトップレベルの評点を得ている事業ラインは、同社が他社よりも5%ポイント劣っている事業よりも早く成長を遂げたのだ。フィリップスは、各事業ラインと顧客アカウントに対する正しい投資戦略を策定するために、収益性指標とともにこのデータを活用した。
これらの企業は、顧客ロイヤルティに関する「信頼できる確実な」データを測定し戦略的意思決定をするのに役立てることが可能であることを実践して見せてくれた。全てのCEOが願いをかなえる時が来たのではないか。非財務資産に関するより多くの情報を得ることだ。結局、キャッシュフローの源泉である顧客という資産に関する情報を知らずして、ビジネスをすることなど出来ないのではないだろうか?
HBR.org原文:CEOs Need Hard Data on Customer Loyalty May 18, 2012
1973年に創設。世界32ヶ国に50拠点のネットワーク、約5700名を擁する世界有数の戦略コンサルティングファーム。クライアントとの共同プロジェクトを通じた結果主義へのこだわりをコンサルティングの信条としており、結果主義の実現のために、高度なプロフェッショナリズムを追求するのみならず、きわめて緊密なグローバル・チームワーク・カルチャーを特徴としている。