戦略的に考えれば、チャンスは見出せる
――本書(『ハーバードが教える10年後に生き残る会社、消える会社』)では、社会問題の解決における企業の立ち位置を「傍観者」「実践者」「革新者」「普段通り」という4つに分けておられます。その上で、これらの要素を併せ持つ「指導者」が求められている、と指摘されていますが。多くの企業がその役割を担うために、何が必要なのでしょうか。
多くのビジネス・パーソンは「確かに重要な問題だと思う。しかしそれは私の仕事ではなく、政府の仕事だ」と言うでしょう。そして「政府は何もしてくれないだろうが」と付け加えるのです。こうした「分かってはいるが誰もやらない」思考が足かせとなっています。
しかしながらビジネス・リーダーは、政府ができないことに対してビジネス・チャンスを見出せるように、もっと戦略的思考を持つべきです。残念なことに、そうした視点をもったビジネス・パーソンはほとんどいないのが現状です。戦略的に考える能力がないために、機会を十分に活かせていないと思います。
――そうした傾向はアメリカの方が、ヨーロッパやアジア諸国に比べて強いという研究結果もあるようですが、それはなぜでしょうか。
これはアメリカ独自の問題と言えると思います。ほかの国々では議会が国のトップを指名していますが、アメリカでは国民が選挙で大統領を決めています。しかし、自分たちが選んだのだから、大統領への期待も大きいかと言うと、実はそうでもありません。
アメリカ人に政府は何をしてくれているのか、聞いてみると分かるでしょう。おそらくほとんどの人が、政府が何をしているのか答えられないと思います。スクールバスの運行、警察や消防、道路の舗装といった公共財の提供が、政府によってなされていることを認識していない人が多いのです。だから「政府は何もやってくれないのに、税金はいっぱい払わされている」と思ってしまう人が多いのです。だからこそ「税金をもらっている政府がやるべき問題」と考えてしまうのです。
(後編はこちら)