●信頼関係を築く
経営上層部に対する信頼度は、組織の健全性を測る重要な指標である。経営トップは従業員との信頼関係を構築するために、自分たちが公正な意思決定をし、従業員を大切にし、よい仕事を評価していることを従業員に積極的に伝えなければならない(詳細は本誌2012年11月号「経営トップは現場マネジャーの声を聞け」を参照)。
これはまた、誠実さを尊重するということでもある。2003年に私がシェリング・プラウのCEOとなった当時、同社はマーケティングの方法をめぐって規制当局との間に問題を抱えていた。そして我々経営陣は、従来の営業コミッション方式をやめる意思決定をした。その後で私は、全米営業会議で3000人の従業員と顔を合わせることになったが、ほぼ全員が不満を持っていた。
自分のやり方が賛否両論を招くことはわかっていたが、彼らには自分たちがコミッション稼ぎの営業スタッフではなく、医療情報の提供者であると自覚してほしかった。私は新任CEOとして、自分たちの品位を損ねるような案件には背を向けなさいと語りかけ、短期的な利益よりも長期的な信頼関係の構築を選ぶよう促した。スピーチを終えると、従業員総立ちの拍手喝采が巻き起こり、多くを驚かせた。
この会議が転機となり、その後会社は17四半期連続で売上げ2桁成長を遂げたのである。
●3つの柱を徹底する――それが、実行力、ひいては高業績につながる
当事者意識、責任感、継続的学習の3つを柱とした文化を持つことは、強力な執行につながる。リーダーは従業員に、問題と解決の両方に関して当事者意識を持つことを促す必要がある。
2004年にシェリング・プラウは、製造とマーケティングにおける深刻なコンプライアンス上の問題を一掃する必要に迫られた。当時コンプライアンス部門を率いていたブレント・サンダース(現ボシュロムCEO)は、電話番号を記した鏡を世界中の事業所に設置させた。不適切な行為を見かけた者に、その番号に電話するよう促すことが目的だった。この鏡が、新たな組織文化を築くきっかけとなった。コンプライアンスを正し会社を再建するために、(他者ではなく)鏡に映る自分自身にできることを問いかける文化である。
急激かつ不安定な変化が起こる今日においても、組織文化は期待を上回る業績の達成に寄与しうる。高いパフォーンマンスを可能にする文化の構築には、時間、コミットメント、CEOの強力なリーダーシップを必要とする。しかし幸いなことに、業種を問わずどんな会社でも築くことができる。その後は業績を伸ばし、勝ち続けることができるのだ。
HBR.ORG原文:Reinvent Your Company Through Culture June 17, 2013

フレッド・ハッサン(Fred Hassan)
プライベート・エクイティを専門とするウォーバーグ・ピンカスのマネージング・ディレクター。以前はシェリング・プラウやファルマシア・アップジョンなどのCEOとして経営再建に力を尽くし、現在はボシュロム会長も務める。