どの国でも世代による価値観の違いはあるものだが、BRIC諸国の女性人材も同様だ。若い世代は野心とワーク・ライフ・バランスの両方を追求する傾向にあるという。
ジュリア・ジアは中国山東省の小さな村の出身だ。村で初めて大学に進学し、30歳のいまは、ルイ・ヴィトン・チャイナの小売部門で働いている。今後も高級品業界で、できれば営業開発か広報の部門でキャリアを積みたいと考えている。「もちろん、経営トップになりたいと思っています」と言う彼女は、ビジネス界のエリートとして働く大勢の中国人女性同様、大きな野心を抱いている。同時に、矛盾するようだが、ワーク・ライフ・バランスが心配だとも言う。「週60~70時間も働けば、くたくたになるでしょう。子どもや両親の世話と両立できなくなれば、キャリアを諦めるしかありません」
この言葉は、40代や50代の同僚たちにとっては驚きだ。共産主義体制下で最初に大学を卒業し、1980~90年代の発展を経験してきた彼女たちは、ためらいもせず全力で仕事に身を捧げてきた。ところが、センター・フォー・タレント・イノベーション(CTI、前身はセンター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー)のデータによれば、昨今の若い世代は違うようだ。「考え方が大きく変化しています」と答えたのは、中国にある大手多国籍企業の人事担当マネジャーだ。「若い女性は、美容や旅行といった、上の世代ならキャリアを積むまでは考えもしなかったことを話題にします」
次世代のグローバル・リーダーたちは、現在の国や企業のリーダーとは根本的に異なっているだろう。新興国市場の女性人材に関する我々の調査によれば、今後はリーダー人材の多くが女性で占められるようになるはずだ。大卒女性の数がいまや男性をしのぐアメリカと同じように、BRIC諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)では大学や大学院で女性が急増している。ユネスコの調査によれば、高等教育機関に在籍中の学生のうち女性が占める割合は、ブラジルでは60%、ロシアでは57%、中国では47%である。
しかし、大卒女性の第2世代が労働市場に参入するにつれ、ある事実が明らかになりつつある。BRIC諸国の働く女性はたしかに有能で野心的だが、その実態はひとくくりにできるものではないということだ。雇用主は、彼女たちが文化や年齢によってさまざまに異なることを認識する必要がある。我々のデータによれば、彼女たちは地域と世代によって大きく異なり、特にキャリアのスタート地点にいる世代(18~30歳)とその上の世代(31~45歳)を比べると、違いが顕著である。