●野心
 新興国市場の女性の大半は大きな夢を抱いているが、ブラジルとロシアでは、若い世代のほうがトップを目指す傾向が強い。ブラジルでは両世代の違いが顕著で、18~30歳の87%に対して31~45歳では77%、ロシアではその差はさらに大きく、72%対57%だった。

●熱意
 ブラジルの若い世代は、その上の世代よりも会社のために全力を尽くそうとする(64%対52%)。一方、インドでは逆で、若い世代が84%に対し30代~40代前半の女性は91%だった。

●仕事への愛着
 中国とインドでは、仕事への愛着を最も強く抱いているのは若い世代ではなく31~45歳の女性だった(中国では63%対80%、インドでは79%対92%)。いままで熱心に働いてきたおかげで、すでに重要な仕事を任されているからだろう。

●忠誠心
 中国とインドでは、仕事に対する満足度と呼応して、忠誠心も若い世代より30代~40代前半の女性のほうが高かった。中国では85%対93%、インドでは90%対98%だった。

 BRIC諸国で最初に大規模な大卒女性層となった世代は、並外れた熱意と忠誠心を持ち、多くの企業がその恩恵に預かっている。この31~45歳の第1世代は、かつても現在も学位を積極的に活かそうと努め、力を試す機会が与えられることに感謝する。しかし、この姿勢は次の世代になると違ってくる。特に忠誠心は、当たり前のものではなくなっている。企業が新興国市場で女性人材を引きつけ、維持し、最大限に活用しようとするなら、女性たちに何をどのように提供するのかを考え直すべきだろう。

 両世代ともに重視していたのは、雇用の安定性、手当ての充実、優秀な同僚と仕事をする機会だった。ただし、これら以上に要求が高まっているものがある。それは、ワーク・ライフ・バランスだ。

 調査したブラジル、中国、インドの女性のうち90%以上が、フレキシブルな就労制度を重視している。30代~40代前半ともなれば、職場での責任も増え、家庭生活との両立に悩むことも多くなるのだから、柔軟な勤務形態を求める気持ちは若い世代よりも強いに違いない――そう思われる向きも多いだろう。ところが、驚くことにそうではない。この世代は並外れた労働意欲を持つこと、そしてキャリアでは献身的な努力が報いられる段階にすでに到達している場合が多いことが理由だろう。

 インタビューで得られた事例から明らかになったのは、若い女性たちは、ジアのようによりよいワーク・ライフ・バランスを欲しているだけではなく、実際に要求しているということだ。「娘たちは、2人とも多国籍企業で働いています。何が欲しいのか、何がいらないのかを、私たちの世代よりも気軽に上司に伝えているようです」と語るのは、サンパウロの金融系多国籍企業で最初にシニア・マネジャーとなった世代の女性だ。「若い世代はもっと自信を持っています。ノーと言うことにもためらいがありません。これは大きな変化です」

 つまり企業は、新興国市場の女性に見られる世代や文化の違いに注意を払う必要がある。未来のリーダーたちがいま必要としているスキルの習得機会やサポートを、確実に提供しなくてはならないのだ。


HBR.ORG原文:Understanding Female Talent in Emerging BRIC Markets January 30, 2012

 

シルビア・アン・ヒューレット(Sylvia Ann Hewlett)
非営利の研究機関、センター・フォー・タレント・イノベーション(CTI、前身はセンター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー)の創設者、所長兼エコノミスト。