ボランティア活動やCSR活動が昨今盛んであるが、そこから企業は実質的なメリットを得ることができるだろうか。近年の研究や事例を見れば、答えは明らかにイエスだ。人材育成や事業機会の発掘など、やり方次第でさまざまな恩恵に浴することができるところに、ボランティアの醍醐味がある。


 従業員は時間に追われ、社外で社会貢献を行う余裕がない。そのため、最近では仕事を通じた社会貢献の機会を求めるようになり、企業側もこれに応じるようになっている。その結果得られるものは、単なる満足感にとどまらない。

 ボランティア活動は参加者に、スキルの向上、ネットワークの拡大、キャリア停滞からの脱却、仕事に対する新たな意義の発見、といった機会をもたらす。これらのメリットは、従業員の意欲向上や離職率の低下にも結びつく。

 センター・フォー・タレント・イノベーション(CTI。前身はセンター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー)のデータによれば、大卒者の大半が、仕事を通して慈善的な活動への関与を高めたいと考えている。2011年にデロイトが実施したボランティア・インパクト調査によれば、自社のボランティア活動に頻繁に参加するY世代(1970年代後半~1990年代前半生まれ)は、仕事に誇りを持ち、会社に忠誠心を抱き、キャリアの進展についても満足する傾向がより強い。最近の大卒者の多くは就職先を選ぶにあたり、その企業が積極的に社会的責任(CSR)を果たしているかどうかをきわめて重視する。ストランドバーグ・コンサルティングが2009年に行った調査によれば、回答者の77%が「就職先を決める際には、社会的課題に対する企業の姿勢を重視する」と答えている。

 こういった感情は、世代を超えて共通のものである。CTIのデータによれば、仕事を通してコミュニティやより広い世界に貢献することが重要だと感じている人の割合は、X世代では女性の91%、男性の76%であった。そしてベビーブーマー世代では女性の90%、男性の79%を占めている。

 企業のボランティア・プログラムにはさまざまなものがある。1日単位のコミュニティ奉仕活動もあれば、優秀な人材を開発途上国に派遣し、非営利団体や実績のある現地起業家に専門知識を提供するミニ・サバティカル(短期間の海外活動)もある。大手格付機関ムーディーズの「アフタヌーン・オブ・サービス」は、ボランティア活動をやってみたいという従業員に、1年に1度機会を提供する。プログラムは平日に実施され、従業員はチームを組んでさまざまな活動を行う。たとえば貧困地区の公立学校を訪問し図書館で本を整理したり、町の公園で球根を植えたりする。恵まれない境遇の女性に衣類の提供や採用面接の訓練をする団体に協力したり、コミュニティで炊き出しを手伝ったりすることもある。

 2008年に始まったこのプログラムに対する従業員の反応は、予想外に大きなものだった、とムーディーズ財団(ムーディーズの慈善部門)の会長であるフラン・レイザーソンは述懐する。