女性にとって残念なことに、イギリスではスポンサーシップは男性の独擅場だ。職位の高い社員がスポンサーを持つ割合は、男性のほうが女性より50%も高い。「オールド・ボーイズ・クラブ」(男性中心のつながり)が健在であるどころか、経営層にしっかり根を下ろしているのだ。結果として、経営幹部(圧倒的に白人男性が多い)がリーダーとして育てる人材を選ぶ時、必然的に「自分の同類」に手を差し伸べることになる。
こうした男性たちのつながりに女性が食い込むことができれば、目覚ましい結果が得られる。CTIの調査によれば、スポンサーがいるイギリス女性は、いない場合に比べ、昇進速度に満足している割合が52%高い。助言を与え励ましてくれるスポンサーがいる女性は、昇給を求める割合が25%高く、1年以内に退職しようと考えている割合は58%低い。また、スポンサーは働く母親に対しては、いっそう強い効果を持つ。スポンサーのいない働く母親が1年以内に退職を計画している割合は、スポンサーがいる場合の2倍以上(14%対6%)だった。
女性はチャンスの到来を、座して待つのみであってはならない。スポンサーシップは互恵的な関係、つまり戦略的提携だ。庇護を受ける者は、スポンサーのために最大限のロイヤルティを持ち全力を尽くすことで、引き替えにスポンサーの継続的な支援を受ける。女性の多くはこの点では優れているが、スポンサーの関心を勝ち取るためにはさらに、際立ったパーソナル・ブランド――スポンサーのイメージと業績の向上に寄与するような、一連のスキルや資質――を示す必要がある。
女性はキャリアの初期の段階から、スポンサーシップを視野に入れ、実際に獲得し、深める努力を続けていく必要がある。その後昇進していく過程でも、引き続き関係を育んでいかなくてはならない。有能な女性人材へのメンタリングに多くを費やしている企業が、その投資を活かすためには、女性人材と経営幹部が互恵的連携を結び育むことができる道筋と場をつくる必要がある。
有能で野心あふれる女性も、その雇用主も、女性がトップに上り詰めるうえでスポンサーシップが及ぼす驚くべき影響力を無視することはできない。両者の努力があって初めて、有能な女性は潜在能力をフルに発揮でき、企業は女性のリーダーシップがもたらす大きな競争優位を手にするのだ。
HBR.ORG原文:Strategic Alliances Can Make or Break Female Leaders June 20, 2012

シルビア・アン・ヒューレット(Sylvia Ann Hewlett)
非営利の研究機関、センター・フォー・タレント・イノベーション(CTI、前身はセンター・フォー・ワーク・ライフ・ポリシー)の創設者、所長兼エコノミスト。