仕事に全力を尽くしていれば、きっと誰かが認めて昇進させてくれる――。これは「ティアラ・シンドローム」と呼ばれ、多くの有能な女性たちが抱える思い込みであるという。経営層へと上り詰めるには、それ以上のもの――「スポンサーシップ」が必要であることをヒューレットは改めて強調する。それは実力者から一方的に支援を受けることではなく、相互にメリットをもたらす「戦略的提携」なのだ。


 企業のCスイート(最高○○責任者)や役員会に女性が少ないことが、このところ大西洋の両側で大きな話題になっている。この議論の背後には、さらに大きな問題がある。リーダーの地位に上り詰める女性の数は、人材プールに占める有能な女性たちの割合に比例していないということだ。

 アメリカでもイギリスでも、女性のホワイトカラーの数は男性を上回っている。センター・フォー・タレント・イノベーション(CTI)のデータによれば、その男女比はアメリカでは47%対53%、イギリスでは43%対57%である。ところが大企業では、男性が女性よりもはるかに速く出世の階段を駆け上る。「マジパン層」――企業をケーキに例えると、表面を覆う糖衣(経営トップ層)のすぐ下の人材がひしめく幹部層――に占める女性の割合は、アメリカではかろうじて3分の1(34%)、イギリスでは4分の1を下回る(24%)。

 このアメリカとイギリスの差は、特にイギリスの専門職女性の輝かしい特徴を見れば、驚かずにはいられない。CTIの最近の調査によれば、経営トップ層に女性が少ないのは、その資格がないからではなく、もちろん野心が足りないせいでもない。イギリス女性の野心は驚くべきものだ。調査対象となった幹部レベルの女性の91%が、昇進を求め、待ち焦がれている(男性は76%)。トップの地位を求めるイギリス女性の割合は、アメリカの女性より22%も高い。

 ところが、その素晴らしい意欲にもかかわらず、さまざまな要因が足を引っ張る。アメリカ同様にイギリスでも、女性は「ティアラ・シンドローム」――抜きん出た成果を上げさえすれば、自然に高い地位が与えられるという思い込み――に陥る傾向がある。

 イギリスを拠点とするエグゼクティブ専門の人材斡旋会社サファイア・パートナーズは、女性の幹部人材のキャリア支援に力を注いでいる。同社のマネージング・ディレクターであるケイト・グラッシングはこう語る。「頑張れば、誰かが認めてくれる――。イギリスの多くの女性は、いまだにそういう幻想を抱きながら働いています」

 そう思うことは、完全に間違いというわけではない。懸命な努力によって結果を出した女性には、見返りがもたらされることも多い。ただしそれは、少なくとも中間管理職レベルまでの話だ。そしてまさにこの段階で、「誰を知っているか」が「どれほど成果を上げているか」と同じくらい重要になる。CTIの調査によれば、どの国でも、有能な女性がトップに到達するためにはスポンサーが必要だ。すなわち、有望人材が次の段階に進み、重要な役割を担えるよう支援を惜しまず、経営幹部として困難を乗り越えられるよう庇護し後押しをしてくれる、力のあるリーダーである。しかしイギリス人女性のうち、直近の昇進の要因として人脈を挙げた回答者は37%しかいなかった。