ブランドを選ぶ際の判断基準が「ステータス」から「信頼」にシフトしているなか、ラグジュアリーブランドは社会的責任を事業においても果たすべくさまざまな施策を行ってきた。グッチのサステナブルな商品展開、途上国の支援を掲げるブランドの台頭は何を示しているのか。新しいラグジュアリーのあり方を定義する動きに迫った。
前回はラグジュアリーブランドの被災地支援を通して、企業活動における社会貢献の重要性について見てきました。そこでわかったのは、ブランドに「ステータス」よりも「信頼」を求める今どきの生活者にとって、社会の一員としての責任を果たす企業は好ましく感じられるという現状でした。
その社会貢献のあり方として新たに顕著になってきているのが、社会的な課題に対して支援をするだけでなく、企業の経済活動自体で課題解決を推進していこうとする「共通価値の創造(Creating Shared Value=CSV)」です。
これはNPO団体などを支援するだけでなく、ブランドの事業そのものにも持続可能性を取り込み、世界をより良いものにしていこうとする活動といえます。ラグジュアリーブランドもいち早く取り組んでおり、例えばグッチは昨年2月にこんなバッグを発売しました。

世界で初めてレインフォレスト・アライアンスから認証を受けたバッグコレクション「Gucci for the Green Carpet Challenge」。レッドカーペットにもサステナブルなファッションを、という思いを込めて命名された。(C)Courtesy of Gucci
それは「Gucci for the Green Carpet Challenge(GCC)」と名付けられたハンドバッグコレクション。このバッグは世界で初めて、レインフォレスト・アライアンスという環境保護団体から、「森林破壊ゼロ」の認証を受けたレザー製品として話題になりました。
レインフォレスト・アライアンスとは、世界の森林保護を目的として環境に配慮した製品やサービスの普及を目指す団体。グッチのGCCバッグでは、ブラジルのアマゾン川流域にある牧場で生産されたレザーを使用しているのですが、認証を受けるには、「牧場運営で森林伐採を抑止すること」、「野生動物の生息地を保護すること」、「地元労働者の人権と福祉を尊重すること」など、厳しい条件が課せられます。
認証の証として、原産地を示した「パスポート」と呼ばれる説明書まで付くこのバッグ。さまざまな課題をクリアしてビジネスの透明性を実現したわけですが、どうしてグッチはこんな特別なレザーを使ったのでしょうか。