「社会を良くしたい」という新しい贅沢の台頭
「社会貢献を掲げる商品やブランドが求められているのは、人々が与えられた商品をただ消費するのではなく、自分や社会にとって本当に必要なものを積極的に選択するようになっているからでしょう」と戸川氏。
グッチが積極的に環境に配慮した商品を手がけ、カルミナ・カンプスやイードゥンが支持される背景には、生活者とブランドにおけるそんな関係性の変化が反映されています。
そうした変化を起こしたのは、リーマン・ショックに端を発する世界的な不況と、ソーシャルメディアの普及でした。不況が人々の消費に対する意識を敏感に高め、ソーシャルメディアが自由な意見の表明を促した結果、生活者は「消費を通じて世の中に新たな価値を生み出したい」と願う存在へと変わっていきつつあります。
商品を通じた社会貢献を実現したラグジュアリーブランドは、そんな要求に応えることで、人々に新たな「贅沢」を提供していると捉えることもできるのではないでしょうか。
生活者は商品の購入によって、社会的に意義ある行動に参加している充足感が得られます。オーガニックコットンの服を身にまとったり、環境に配慮したハンドバッグを持ったりすることで、「社会に良いことをしている」という心地よさをもたらせてくれるわけです。しかも、デザインだってラグジュアリーブランドの名に恥じないものがそろっています。
ここにおいて、企業活動における社会的課題の解決と収益の拡大は両立しています。こうした流れが今後もますます広がっていくことは、間違いありません。