ビジネス=商品×ビジネスモデル
「ビジネスモデル」という言葉はビジネスシーンで多用されていますが、それが何を指すかは必ずしも明確ではありません。「商品設計」と「ビジネスモデル設計」を一緒くたにし、「儲からない原因」の切り分けができなくなっているケースもよく見受けられます。
ここではっきり意識しておきたいのが、「ビジネス=商品×ビジネスモデル」という式です。

【図1】ビジネス = 商品 x ビジネスモデル
ビジネスを考える際、「商品設計」と「ビジネスモデル設計」は明確に分けて検討する必要があります。ビジネスモデルは一度構築したら完成というわけではなく、収益性をより高めるために、時代の変化にあわせて最適化し続けることが重要です【図1】。この連載で取り扱うのは、すでに売り物になる製品やサービスがある、あるいは、商品プロトタイプがあることを前提とした「ビジネスモデル設計」です。
ビジネスモデルの定義は論者の数だけ存在するといわれますが、私はシンプルに考えて、ビジネスモデルとは「顧客価値を提供し続けるための仕組み・事業構造」と定義しています。ビジネスモデルは「仕組み・構造」ですから、文章で説明するより、図で表すのが合理的であり、図示することでより把握しやすくなります。
「ビジネスモデルは『図式化フレームワーク』を用いてデザインするとわかりやすい」と考えているのは私だけではありません。世界的に使われている「ビジネスモデル図式」があるのをご存じでしょうか? これが2つ目のビジネスモデル・デザインツール「ビジネスモデル・キャンバス」です。
世界標準の「ビジネスモデル・キャンバス」
最近シリコンバレーでは、「リーン・スタートアップ」というビジネスモデル設計手法が注目されています。スタンフォード大学コンサルティング准教授スティーブ・ブランクらが中心となり実践しているこの手法では、入念なプランニングよりも顧客からのフィードバックをもとにした試行錯誤、反復設計を重視します。テクノロジー系ベンチャーだけでなく、ゼネラル・エレクトリック(GE)などの大企業でも実践がはじまっています。DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー2013年8月号『起業に学ぶ』でも特集されたので、ご存じの読者も多くいらっしゃることでしょう。
このリーン・スタートアップで採用されているビジネスモデル・デザインツールが、アレクサンダー・オスターワルダーらが考案した「ビジネスモデル・キャンバス」と呼ばれる図式化フレームワークです。ビジネスモデルを9つの構成要素として定義します【図2】。

【図2】ビジネスモデル・キャンバス
①顧客セグメント(CS:Customer Segments):ターゲットとする特定の顧客グループ
②価値提案(VP:Value Propositions):提供する製品やサービス、顧客価値
③チャネル(CH:Channels):どのように顧客に価値を届けるか、販売経路
④顧客との関係(CR:Customer Relationships):顧客に対してどのような関係を結ぶか
⑤収益の流れ(R$:Revenue Streams):生み出す売上の流れ
⑥経営資源(KR:Key Resources):事業に必要な資産
⑦主要活動(KA:Key Activities):企業がメインで行う活動
⑧パートナー(KP:Key Partnerships):サプライヤーと事業パートナー
⑨コスト構造(C$:Cost Structure):事業を運営するためのコスト構造