最新号の特集は「ビジネスモデル 儲かる仕組み」。いまなぜビジネスモデルなのか。90年代後半のビジネスモデル・ブームを振り返り、編集長が特集にこめた思いを語る。

 「デル革命」のインパクト

  ビジネスモデルという言葉が人口に膾炙されるようになったのは、1990年代後半です。当時、インターネットが実用段階に達し、ビジネスでの応用が動き出しました。その代表例が、デル(当時のデル・コンピュータ)でしょう。従来のパソコンメーカーは、自社でつくれない部品を部品メーカーから調達し、独自の組み合わせで商品化し差別化していました。CPUの性能の高さを売りにしたり、画面の鮮明度を強調したり、画像や音声ファイルの操作性を謳うなど、部品の組み合わせから多くの機種が生まれ、また独自のデザインで独自のブランドを確立する企業が競い合いました。そこにデルは、BTOBuild to Order)というモデルを引っ提げてパソコン市場を席巻しました。

デルのモデルは、販売は基本的にインターネット経由でパソコンから。顧客はディスプレイの大きさやハードディスクやメモリーの容量、CPUの性能などを自分本位に選び注文して料金を支払います。注文を受けたデルは、その仕様に従って素早く組み合わせ顧客に発送する。注文があってから組み立てるため、BTOと呼ばれました。

従来のパソコンメーカーが大量生産で販売店経由で販売していたのに対し、デルは中間業者を除いた直販モデルです。また、部品の性能向上のスピードが速く、最新鋭の機能を製品に取り込むには、在庫のリスクが高くなります。そこで在庫をもたないデルのモデルは、常に顧客に最新機種を提供できるというメリットがありました。また同時に納品前に入金があることから、資金繰りが極めて良好であるというメリットもあります。

つまりデルは従来のサプライチェーンを大きく変革させ、低価格で高収益のモデルを打ち立てました。技術志向の業界で技術力を武器にせず、サプライチェーンの変革で、競争優位を獲得したのです。

サプライチェーンの変革は当時の流行ともなり、「中抜き」やあるいはバリューチェーンそのものを見直すことで、新たなビジネスモデルが生まれることが大きな注目を浴びました。

それから約20年経ち、いま再びビジネスモデルが注目されるようになりました。前回と何が違うのでしょうか。これが今回の特集のテーマですが、取材を通していろいろな方のお話しを御伺いし、バリューチェーンの再編はいまだ道半ばであり、90年代後半の宿題を抱える企業が多いと考えるようになりました。