新たな仕組みはいかに生まれるか
ビジネスプロセスでデジタル化が進むと、他社との協働が容易になり、一社でバリューチェーン全体を持つ必要なくなります。むしろ自社は強い領域に特化し、他社との連携により価値の高い事業を作ることができます。また、近年のネット環境の多様化は、バリューチェーンの中抜きを実現しました。
私が最近注目しているビジネスモデルは、カーシェアリングです。タイムズ24が運営するカーシェアリング事業では、会員申込みから、クルマの予約まですべてネットで完結します。予約した当日はタイムズの駐車場まで行き、予約したクルマに会員カードをかざすとカギが解除されます。予約は15分単位ででき、時間内にクルマを同じ駐車場に返す責任は利用者が負います。ただ返却時間が近づくと、携帯メールにリマインドメールが来たり、カーナビから音声で残り時間を告げたりする仕組みがあります。給油や洗車は基本的に気がついた人がやることになっており、給油した人は30分無料、支払いは車内にあるカードで済ませます。
カーシェアリングが優れているのは、ネットや携帯端末を利用することで、いつでもどこでもクルマを使いたいときに空いているクルマを探すことができる点です。生活者がクルマを使いたいというニーズを、所有ではなく、気軽にかつ安価に満たす仕組みを作りました。まさにモバイル環境が整ってきたからこそ生まれたビジネスモデルと言えます。
今号では、90年代の当時一世を風靡した「デコンストラクション」について、内田和成さんに改めて論考していただきました。新しい技術の登場は、生活者によりよい価値を届ける仕組みづくりのチャンスです。仕組みを見直すことから、新たなビジネスの可能性が見つかるかもしれません。(編集長・岩佐文夫)