ビジネスモデル・パターンの一例
「フリーミアムモデル」をピクト図解する

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【図6】「フリーミアムモデル」を
ピクト図解する

 ビジネスモデルにはいくつかのパターンがあります(パターンについては、次回詳しく紹介します)。ここでは「0円」表記の一例となる「フリーミアムモデル」を取り上げ、ピクト図解してみましょう。機能を制限した「ベーシック版」を無料で多くの人に使用してもらい、一部のユーザーが有料プレミアム版にバージョンアップすることを狙うビジネスモデルがフリーミアムモデルです。フリーミアムという言葉はフリーとプレミアムを足し合わせた造語。ベストセラー『フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(日本放送出版協会)で広く知られるようになりましたが、ビジネスモデルとして複雑なものではなく、ピクト図にすると【図6】のようにシンプルに整理できます。「モノ」が無料で提供されるベーシック版にも「カネ」の流れを示す矢印を描き、「¥」マークの下に「0円」と明記します。

 フリーミアムモデルは特にウェブサービスで非常によく使われているビジネスモデルです。フリッカーやドロップボックスなど、クラウドコンピューティングを活用した多くの写真共有サービスやファイル共有サービスで採用されています。

 

個人向けと法人向けサービスを展開するEvernoteのビジネスモデル

 では次に、「フリーミアムモデル」の具体例として、エバーノート社のビジネスモデルをピクト図解してみましょう。
 エバーノート社は文書や写真、音声など様々なコンテンツをクラウド上に手軽に保存できるサービス「Evernote(エバーノート)」を運営する企業です。2008年にサービスを開始。「すべてを記憶する(Remember Everything)」を「価値提案(VP)」とし、あらゆるデバイスから保存・閲覧できる利便性が受け、またたく間に世界7500万人のユーザー数を抱えるまでに成長しました。
 私も愛用者の一人ですが、ひらめいたアイデアや新規事業のネタ、企画書のラフスケッチ、音声メモ、街中で見つけたビジネスモデル・パターン、手書きのピクト図などを記録しています。人の記憶には限界があり、忘れてしまうので、自分の記憶を補完するツール「ネット上のスクラップブック(=企画のネタ帳)」として使っています。

 同社のフィル・リービンCEOは親日家としても知られ、シリコンバレー企業には珍しく、自社を100年続く企業にしたいと「100年スタートアップ」を目標に掲げています。DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー2013年12月号『理想の会社』でリービン氏のインタビューが掲載されていたので、お読みになった読者も多くいらっしゃることでしょう。
 Evernoteの「スタンダード版」は無料で利用できますが、毎月アップロードできるデータ容量は60MBまで、共有ノートの編集ができないなどの制限があります。月額450円、年額4,000円(2014年3月現在)支払えば「プレミアム版」が利用でき、月間アップロード容量は1GB、前述の機能制限がなくなります。「顧客との関係(CR)」は「ライフスタイル管理を支援する」、“売り切りではない”長期的な関係です。
 同社はこうした個人向けのサービスのほかに、法人向けの「ビジネスプレミアム版」サービスも行っています。1ユーザーあたり、月額1,100円、年額13,200円(同3月現在)。企業や教育機関など組織で使うための共有機能やユーザー管理機能、セキュリティ機能などが強化されています。同サービスでは直接販売以外にも、法人営業「パートナー(KP)」とも連携。たとえばセールスフォース・ドットコム社とは、営業支援ソフト「Salesforce」と連携して顧客関連情報を包括的に把握できるようにするプラグイン「Evernote Business for Salesforce」を開発・提供する連携をしています。