A社が「Biz文具」からアナロジー発想したビジネスモデル
さて、ここまでは、日常業務のしがらみにとらわれない柔軟な発想をするために、事業構造の似ている他業界のB社でビジネスモデルを考えてきました。最後に、そこで発想したビジネスモデル・パターンを「レゴ」ブロックのように組み合わせ、自社に照らし合わせて考える「アナロジー発想」を行います。
実際にA社で採用されたビジネスモデルを詳しく見てみましょう。A社は子ども向け製品を製造・販売する業歴27年の消費財メーカー。培った技術・経営資源をいかして「オフィス向け製品」を開発しました。本体と消耗品の2つで構成される製品で、消耗品で継続的に収益をあげる「消耗品モデル」(連載第3回参照)です。
ただし、この製品の使い方には少し慣れが必要で、適正に活用されないと消耗品で安定した収益を上げることができません。そのため、「Biz文具」の第1案では十分な効果が見込めません。そこで、もうひとつの第2案からアナロジー発想して、「使い方教室」を展開するプランがでました。誰が「使い方教室」を主催するのか。A社は長年コンシューマー向けのビジネスをしてきたので、法人にアプローチする「チャネル(CH)」がありません。
そこで、すでに法人向けサービスを提供している企業で、「パートナー(KP)」として連携できそうな企業を探しました。また、この製品は設置場所を選ぶこともあり、最初からオフィスに常設できないかと不動産デベロッパーにもアプローチしました【図2】。

【図2】アナロジー発想を行ったA社のピクト図
結果的に不動産デベロッパーではないパートナー企業になりましたが、ほぼこのピクト図通りのビジネスモデルを構築することができました(秘密保持契約の関係で詳細は割愛します)。「使い方教室」のノウハウをライセンス提供し、パートナー企業の既存の法人向けサービスに包含して提供することになりました。
うれしい誤算としては、製品を導入された企業の社員の方が自宅でも使いたいということで、家庭内でのニーズを発掘できたことです。現在「オフィス向け製品」を「家庭向けに製品」にカスタマイズして販売することを検討中です。
『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2013年8月号』の論文「リーン・スタートアップ:大企業での活かし方」でスティーブ・ブランク氏が「顧客開発モデル」を提唱しているように、新規事業のビジネスモデルはあくまでも「仮説」にすぎません。A社のように実際に販売して顧客の声を聞きながら、仮説検証・軌道修正していくことが肝要です。
以上をビジネスモデル・キャンバスにまとめると【図3】になります。

【図3】アナロジー発想を行ったA社のビジネスモデル・キャンバス