2.バックオフィスを合理化する
 ザッポスの卓越したサービスは伝説となっている。そのための費用を捻出できている理由の1つは、非常に無駄のないオペレーションを実践しているからだ。バックエンド業務のコストを削減し、その分を優れた顧客対応の実現に充てている。つまり、送料は無料で、ザッポスの親切で有能なオペレーターが好きなだけ長く電話応対してくれる。顧客との通話時間の長さは、同社の24時間対応コールセンターでは名誉の印にさえなっている。我々が最後に確認した時、「子どもの靴を買う役目だった夫を亡くしたばかりの未亡人と8時間」というのが最長記録だった。

3.顧客対応業務を単純化する
 サービス業務は複雑になればなるほど、顧客ニーズに集中することが難しくなる。再びコールセンターに話を戻そう。標準的なコールセンターのオペレーター(ザッポス以外)は、1度に8スクリーンに対応することを求められ、その間にもどれだけ早く通話を終了できるかを計測されている。これでは相手の要求や不安に応えることは難しい。スタッフの仕事を単純化すれば会社のサービス水準を向上できる。スクリーンの数を8つから4つに減らす方法を考え、通話時間を計るのをやめるべきだ。

4.コストとサービスを二者択一にしない
 目標は、サービスを向上させながらコストを下げることだ。たとえば、学校のクラスを考えてみよう。個人授業よりもクラスで教えたほうがコスト効率がよい。さらに、生徒同士で意見やアイデアを交換させ、互いから学ばせることによって彼らの経験を高めることもできる。集団セラピーも同じ原理だ。あなたの事業でも、コストを削減し顧客の利益にもなる方法はないだろうか。取っ掛かりとして、顧客対応プロセスにかかる時間を見直してみよう。迅速化はたいがいコスト節約につながり、顧客にも喜ばれる。どちらもハッピーだ。

5.顧客を働かせる
 我々が調査したどのサービス分野でも、セルフサービスが採用され始めている。その理由は明らかだ。ガソリンスタンドでの給油であれ、レストランでの食器の返却であれ、かつては従業員がやっていた仕事を顧客に肩代わしてもらえば、たしかにコストは浮く。ここでもポイントは、セルフサービスにすることで顧客経験を向上させられるかどうかである。航空会社のセルフチェックイン機が好例だ。サービスにうるさい乗客ほど、早朝から元気なカウンターのスタッフと接するよりも、タッチスクリーンで素早く自分の席を選んでチェックインしたいと思っている。

 上記の5つの戦略は、保険から旅行、高級小売店まで幅広いサービス分野で機能している。コスト効果の高いサービス戦略について、あなたはどんな知識や経験をお持ちだろうか。


HBR.ORG原文:Win on Service in a Tough Economy February 8, 2012

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フランシス・フライ(Frances Frei)
ハーバード・ビジネススクールのUPS寄付講座教授。サービス・マネジメントを担当。著書に『ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略』(アン・モリスとの共著、日経BP社)がある。

アン・モリス(Anne Morriss)
コンサイア・リーダーシップ・インスティテュートのマネージング・ディレクター。著書に『ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略』(フランシス・フライとの共著、日経BP社)がある。