したがって、サービスコストを回収しようとするならば、消費者の感覚の範疇で考えなければならない。ここで最も重要なのは、納得感だ。
追加料金として最も納得されやすいのは、シンプルで、透明性があり、公平性に基づくものだ。妥当な金額、つまり誠実なサービスに対する誠実な価格だと感じられ、売り手と買い手の間にある暗黙の了解を裏切らない。ベライゾンが気づいたように、請求書に付加される「手数料」はとりわけ不愉快だ。これは支払い義務を果たそうとする顧客をいじめるようなものである。
難しいのは、企業と顧客の暗黙の了解が実に多岐にわたることだ。価格設定や追加料金に関する普遍的なルールはほとんど存在しない。公正かどうかの判断は主観に左右されることが多く、確固とした業界基準もない。大家さんに部屋の賃貸料を請求されるのは構わないが、母親から同じことをされたらおかしいと思うだろう。
格安航空会社のスピリット航空は、座席のリクライニングをやめ、チケット代を除くほぼすべての料金を高くしたが、サウスウェスト航空にそれができないのは上記の理由による。株式コードがLUV(ラブ)で陽気なパイロットがいるサウスウェスト航空と異なり、スピリット航空は顧客と仲良くなろうとは思っていない。必要最低限のサービスしか提供しないノンフリルのスピリット航空は、顧客が分別のある大人であることを前提にしている。メッセージは明確だ。格安である代わりに、ある程度の不便は我慢してください、至れり尽くせりがお望みなら、どうぞよそをお使いください――。
さらに、経済情勢も関係している。価格設定は景気と無縁ではないため、非難の的になりやすい。不況で傷ついている消費者は、料金システムが不当ではないかという疑いを深めている。この景気変動を生き残りたい企業は、顧客の信頼を維持すべく慎重になる必要がある。当初の契約に反するように見える変更は、他の何よりも顧客の信頼を損なう。その変更が追加料金を伴うのであれば、なおさらだ。
要するに、追加料金はサービス向上に寄与することもあるが、顧客のニュアンスや人間性をよく考えた方法が必要である。価格設定で企業に求められるのは、消費者に対して正直になることだけだ。そうすれば消費者は対処できる。しかし子ども扱いして真実を隠したり、「すべてを知っている自分たちに任せておけ」と言うならば、消費者の怒りはこれからもあふれ続けるだろう。
HBR.ORG原文:How to Charge a Fee (Without Starting a Customer Rebellion) March 23, 2012
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フランシス・フライ(Frances Frei)
ハーバード・ビジネススクールのUPS寄付講座教授。サービス・マネジメントを担当。著書に『ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略』(アン・モリスとの共著、日経BP社)がある。
アン・モリス(Anne Morriss)
コンサイア・リーダーシップ・インスティテュートのマネージング・ディレクター。著書に『ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略』(フランシス・フライとの共著、日経BP社)がある。