――組織や会社の風土については、どのように変えられたのですか。
組織は大きくは変えていません。基本的な考え方は、分権化です。中央集権が嫌いなんです。もともと本社は公僕です。みんなが仕事をやりやすいように、いかにしてサービスを提供するか。それをサポートするのが本社の仕事。本社が偉いなんてとんでもない。分権化で、プロフィットセンターを4つの地域事業部に分けて、権限をすべて委譲しました。あなたの好きなようにやっていいですよ、あとは結果責任を取ってくださいね、と。
分権と同時に取り組んだのが、仕事の文化を変えることでした。「コミットメント&アカウンタビリティ」、約束と結果責任です。ビジネスの基本は、まず約束から始まる。約束したことに対して結果責任を負う。アカウンタビリティを説明責任と訳す人もいますが、それは違う。問われるのは結果。ものすごくシンプルな話です。
例えば、来年度の売上げと利益の目標は、まずCEOの私が、株主が選んだ取締役会と握ります。A4の紙1枚に約束してサインする。契約書です。次は、私とCOOの社長が握る。社長には部下が何人もいますから、彼らと握る。彼らが部下と握り、またその部下と握る。社員の数だけ契約書が存在することになります。契約書であって、命令書ではありません。結果が出せなかったら、それなりのことになる、というだけです。
もちろん最初は社内に戸惑いがあったと思います。でも、慣れるんですよ。今では「C&A」という言葉がすっかり社内用語になっています。時間はかかりますが、文化になりましたね。目標は下から積み上げていくというやり方もありますが、余計な時間がかかります。全体の数字をつくるのは、やっぱりトップでないといけない。
わけのわからない身分制度を残していたら、会社はもたない
――すると、人事評価についても変えられたのですね?
変えました。評価の基本的な考え方は、フェア。より公平公正に。これが大原則です。人の評価というのは難しい。だから、シンプルでデジタルでコントラクチャル(契約)にする。これは私の基本方針です。夜中まで残業したとか、そんなことは知ったこっちゃない。定性的なものを増やすと、結局、好き嫌いになるんです。だから評価はシンプルに、できる限り数字でやる。そして最後は、契約にする。給与体系もできるだけシンプルにして、手当の数も減らしました。
同時に、組織の階層を減らしました。日本の会社には、わけのわからない階層が多すぎる。課長でもないのに課長役とか、部長補佐とか部長代行とか、すぐに中二階をつくりたがるんですね。そうすることで、上がれない人もちょっと上げて満足させる。身分と責任を混ぜこぜにして、併存させてしまうわけです。でも、こんなことをやっていたら、会社はもちません。生き残ろう、成長しようと思ったら、変えるしかないんです。
(後編に続く)