約束し、結果責任を持つ、という考え方へ仕事の文化を変えた

――稼働率の低い工場が、どうして生まれてしまったのでしょうか。

 僕が入る前にカルビーは実に面白いことをやっていたんです。データ経営です。理屈から言えば、間違ってない。でも、当時はコックピット経営といって、とにかくデータだらけでした。

 データが氾濫すると、データを利用して会社を経営したくなる。世の中にはそういう経営もあるけれど、カルビーは、そんな難しい経営をする必要はなかった。なのに、例えば4月のPOSデータを使って来年の計画を立ててしまう。その計画をベースに製造計画を立て、仕入れの計画を立てる。こんなもの、当たるわけがないんです。明日のこともわからないのに、来年のことなんてわかるはずがない。鬼が笑いますよ。だから、そんな難しいことはやめよう、と。もっとみんながわかる簡単なことをやろう、と言いました。

 カルビーの場合、一番やっかいなのは、主力商品の馬鈴薯の仕入れでした。天候に左右される。だから調達している人たちに、難しいことは考えず、とにかく今、できるだけいいものをできるだけ安く、たくさん買って、と言ったんです。買いすぎてもいいから、と。

 買ってきたら、今度は工場でどんどんつくる。そうすると、フル生産になる。稼働率が上がる。そして、出来上がったものをどんどん売る。カルビーの商品は、売ろうと思ったら絶対に売れるんです。これが、この会社の一番の強みです。もちろん、売れる商品と売りにくい商品がありますが、そうなったら価格を下げればいい。簡単なことです。それこそ半値にしたら、必ず売れる。

 そうすると、棚からなくなるわけですね。なくなったら、次の商品を入れたらいい。何より罪なのは、売れないものをずっと置いておくことです。売れないことが罪なんじゃないんです。棚にずっと置いておくことが罪なんです。

 これだけです。簡単でしょう。カルビーの強みは何か、ということさえわかっていれば、難しいことなんてやる必要はない。実際、こうして固定費が下がっただけで、1.5%くらいだった営業利益率が、今は約10%になっているわけです。