商品の価格を下げると、需要がどれだけ増えるのか。どの価格に設定すれば、最大の利益が得られるのか。この2つの問いを同時に、素早く把握する価格設定法があるという。ノースウェスタン大学の2人の教授が考案した、「パープル・プライシング」という興味深いオークション手法を紹介する。本誌2014年7月号の特集「良い価格 悪い価格」関連記事、第2回。


 どんなビジネスであれ、商品を売って利益を出すためには、価格の変更が売上げと利益に及ぼす影響をある程度理解していなくてはならない。売り値を2倍にすれば、売上げは減るが利幅は増える。それで利益は上がるのか。売り値を半額にしたらどうだろう。利幅が減っても儲かるくらい、売上げは増えるのか。

 過去のデータを基にこの判断を下す企業もあれば、原価に利益を上乗せしながら探っていく企業もあるだろう。しかし、より効果的な方法がある。リアルタイムの情報を用いて、需要構造を正確に把握すると同時に、利益を最大化する価格を見つける方法だ。これはオランダの花市場で100年以上前から用いられてきた、ダッチ・オークションと呼ばれる手法がベースになっている。

 ダッチ・オークションではまず高値から入札を始め、買い手がつくまで価格を下げていく(逆競り)。誰かが買うと言った時点で競りが終了するので、このやり方は迅速だ。

 我々はダッチ・オークションに工夫を加えた価格設定法を、ノースウェスタン大学のバスケットボールの試合のチケットに導入した(筆者2名のうちバリガは同大学のケロッグ・スクール・オブ・マネジメントの教授、イーリーは経済学部の教授)。「パープル・プライシング」と名づけたこの手法には、通常の逆競りとは異なる非常に重要な特徴がある。最終価格よりも高値でチケットを購入した人にはその差額が返金される、「パープル・プレッジ」保証という仕組みを取り入れたのだ。需要の把握と適正価格の設定を同時に可能にするのが、このパープル・プレッジである(「パープル」は、ノースウェスタン大学のスクールカラーである紫が由来)。

 あなたがワイルドキャッツ(ノースウェスタン大学のスポーツチームの愛称)の大ファンで、100ドル払ってでもオハイオ州立大学バッカイズとの試合を観たいとしよう。現行価格は99ドル。もう価格は変わらないと思うなら、よい座席を確保するためにその場で購入する。しかし従来型のダッチ・オークションでは、価格が下がる可能性もあるため、もう少し待ってみようと思うかもしれない。パープル・プレッジは価格が下がると差額を返金するため、このジレンマを解消してくれる。値下げ分が保証されるということはつまり、自分の最大支払い意思額を下回ったらすぐに購入すべきなのだ。この保証制度を備えたパープル・プライシングを導入したことで、価格別の売上げを把握できるようになった。たとえば70ドルの時とそれより高額な時の販売数を比べることで、「需要曲線」が見えてくるのだ。