経営者資本主義から
株主資本主義へ

 近代資本主義は、大きく2つの時代に分けられる。

 第1は、1932年に始まった「経営者資本主義」の時代であり、「企業にはプロフェッショナル・マネジメントが必要である」という、当時としては急進的な概念がその特徴である。

 第2は、76年に始まった「株主資本主義」の時代である。全体に一貫する前提は「あらゆる企業が目的とすべきは、株主の富を最大化することである」という考え方であり、企業がこの目標を追求することで、株主にも社会にもメリットがもたらされるという。

 しかし残念ながら、この前提には欠陥がある。そろそろこの考え方を払拭し、第3の時代、すなわち「顧客資本主義」へと転換すべき時である。

 前者は、その後大きな影響を及ぼした学術研究から始まった。すなわち、当時コロンビア大学法学部教授だったアドルフ A. バーリ(71年没)とハーバード大学経済学部博士課程に在籍中のガーディナー C. ミーンズ(88年没)は32年、歴史的著作『近代株式会社と私有財産[注1]』を発表し、そのなかで所有と経営を分離すべきであると主張したのである。

 以後、「ロックフェラー家やメロン家、カーネギー家やモルガン家などのオーナーCEOによって産業界は支配されるべきではない。企業は、外部から雇い入れた人材、すなわち新たな階級『プロフェッショナルCEO』によって運営されるのが望ましい」といわれるようになった。