法律と心理学の専門家であるイリノイ大学のジェニファー・ロッベンノルトの研究によれば、相手との関係性に即して謝罪の方法をうまく微調整することが可能であるという(関連記事)。

 ●相手が知らない人か、ただの顔見知りである場合

 スーツをコーヒーで汚された人は、償いを求めている。償いとは、修復的な行動を通して両者のバランスを回復することだ。償いには有形のものもある。車をバックさせすぎて隣家のフェンスを壊してしまった時、修理や交換の費用を負担するとか、恋人の携帯をトイレに落としてしまい代わりの携帯を買ってくるといった場合だ(ちなみに、これは私がやってしまったことだ)。あるいは、感情を重視したり、付き合い方を変えるといった償い方もある(例:「失礼な振る舞いをして申し訳ない、これからは本当に気をつけます」)

 ●パートナー、同僚、友人の場合

 あなたが不注意から蚊帳の外に置いてしまった同僚が求めているのは、償いではない。被害者とあなたの関係がある程度深い場合は、相手の立場に立って共感を表明することが必要だ。あなたが引き起こした災難を認め、相手への気遣いを表明するのだ(例:「君の努力を正しく評価できなくて申し訳なかった。気を悪くしたでしょう。もし自分が同じことをされたら、最悪だと思う」)。共感を示すことで、相手は自分が理解されている、パートナーとして評価されていると感じ、信頼を取り戻すことができる。

 ●チームに迷惑をかけた場合

 現代の職場では、チームで仕事をすることが多い。あなたが重要な締め切りを守れなかった時、その被害は上司ばかりか、チーム全体、場合によっては会社全体に及びかねない。チームの一員として求められる謝罪は、償いや共感の表明ではなく、ルールと基準を破ったことを認めることだ。基本的には、あなたが属するグループや組織、社会の行動基準に従わなかったことを認める必要がある(例:「このチーム(または組織、家族、コミュニティ)に対して私は責任があるのだから、もっとよくわきまえておくべきでした。自分だけでなく、私を頼りにしてくれている人たちを失望させてしまいました」)。

 こうしたことをふまえると、私たちは驚くほど謝るのが下手である。謝罪を受ける側に立つことは多々あるのだから、よい謝罪と悪い謝罪についてわかっていそうなものだ。しかし実際には、謝る側になった時にどうすべきかを忘れてしまうことが多いのだ(それは謝罪のみならず、相手を感心させようとしたり、説得したり、助けを申し出たり、モチベーションを高めようとしたりする場合も同じだ)。

 だから、謝罪の言葉を考える時は次のように自問してみよう。「自分が話そうとしているのは誰か。相手は謝罪を通して何を求めているだろうか」。地下鉄であなたがぶちまけたコーヒーをしたたらせている人は、「気持ちを察して」もらうことを求めてはいない。しかし、あなたが奥さんの誕生日を忘れた時、相手は自分の胸中を察してほしいと思っているはずだ。


HBR.ORG原文:The Most Effective Ways to Make It Right When You Screw Up June 19, 2013

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