いま静かに、着実に現れつつある新しい現実は「ニュー・ノーマル」と呼ばれるが、この新時代を象徴するリーダーはだれかと問えば、日本では、大半の人が「柳井正」の名を挙げるのではなかろうか。柳井氏は昨2009年、「2020年の夢」として、売上高5兆円、経常利益1兆円という目標を全社員に発信した。そこには、チャレンジングな目標を掲げることで、企業変革と社員一人ひとりの自己変革を促すという意図も込められている。また、これを掛け声だけに終わらせないために、「グローバルワン」「全員経営」というスローガンを掲げ、向こう5年間で200人の経営者人材を育成する教育機関を立ち上げた。

ニュー・ノーマル時代の象徴(アイコン)的リーダー

 現在の世界同時不況が終わった時、経営環境は間違いなく様変わりしていることだろう。

 ピーター F. ドラッカーは、歴史には「峠」があると言う。たとえば、65カ月続いた「1873年恐慌」(Panic of 1873)、また1973年のオイル・ショック以後の世界には、「新しい現実[注1]」が登場したという。

 そして現在、リーマン・ショック後に現れつつある新しい現実は「ニュー・ノーマル[注2]」と呼ばれ、この新世界では、あちこちでほころびが出始めている20世紀のゲーム・ルールがついに通用しなくなるといわれている。

 新しい時代の揺籃期には、必ず既存秩序の破壊者、すなわち新秩序の創造者が現れる(それは多くの場合、辺境からやってくる)。彼らは、この不安定さや不確実性をチャンスととらまえ、積極果敢に行動する。

「世界経済はいまようやく本当のグローバル化が始まった。まだグローバル企業もわずかしか存在しない。こんなチャンスはありません」

 ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏は、この厳しい事業環境こそチャンスであると、変革のアクセルを強く踏む。