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「ボス・マネジメント」はなおざりにされている
「ボス・マネジメント」という言葉は、多くの人にとって、耳慣れない、あるいは怪訝に聞こえるのではないか。
組織では、伝統的に上意下達が重んじられてきたため、なぜ下から上への関係を管理する必要があるのか、その理由は模糊としている。もちろん、個人的な理由や社内政治上の理由でそうするならば話は別である。
しかし、政治的な駆け引きやゴマすりのことを申し上げているのではない。むしろ、あなた自身、あなたの上司、そして会社にとって最も望ましい結果となるように、意識して上司と一緒に働くプロセスとして、この言葉を使っている。
我々の研究によれば、できる管理職は、部下との関係だけでなく、上司との関係にも時間と労力を割いている[注]。また、上司とうまくやることは、マネジメントの重要な一部であるにもかかわらず、有能で上昇志向の強い人ですら、これをなおざりにしていることも、これらの研究は示している。
実際、部下、製品、市場、技術については積極的で上手に管理しているが、上司にはほとんど受け身になっているマネジャーもいる。このような態度は、必ずと言ってよいほど、本人のみならず会社に悪影響を及ぼす。
上司との関係を管理することの重要性、あるいはそれを上手にやることの難しさにピンと来ないとすると、以下で紹介する、悲しくも示唆に富んだ話についてしばし考えていただきたい。
フランク・ギボンズは、業界でも製造の第一人者として知られ、収益の面から見ても優れたビジネス・リーダーであった。1973年、彼はその能力を買われて、業界第2位、収益性では第1位の企業の製造担当バイス・プレジデントになった。
しかし、ギボンズは人使いが下手だった。彼自身もそのことを承知していたし、社内や業界でも有名であった。社長も彼のこの弱点を知って、他人と一緒に働くのが得意で、ギボンズが不得手な部分を補える者を部下につけた。これはみごと奏功した。