ポーターやドラッカーなどマネジメントの大家とともに経営の進化がもたらされてきた。しかしよく見ると経営学の発展の歴史は、経営者の挑戦の歴史とも言い換えられる。
スープストックのビジネスモデルとは
先日、弊誌読者の交流会が開催され、ゲストにSoup Stock Tokyoでお馴染みのスマイルズ社長・遠山正道さんにお越しいただきました。遠山さんのビジネスモデルに対するお考えは、ご著書のタイトル『やりたいことをやるというビジネスモデル』というタイトルの通り実にユニークです。当日のイベントでも遠山さんは、「3C分析(競合・自社・市場分析)なども、やりたいことに確信がもてれば、あとからどうにでもなるんです」とお話しされました。その事業への強い思いが、独自のビジネスを切り開いてきたカギなのでしょう。会場にいた参加者も、勇気をもらったという声が多く聞かれました。
遠山さんのお話しのユニークなところは、「ビジネスモデル」を扱った書籍には、絶対に出てこない言葉だからです。今日複雑化する経済環境では、従来にはなかった情報の流れが新しいお金の流れをつくりました。ここに新たなビジネスモデルを生み出す可能性があるのですが、それらにバリューチェーンや収益方程式の話しは出てきても、「やりたいことをやる」という項目など見当たりません。いまだ経営学の世界では、扱われていない領域ともいえます。
ところで、弊社から書籍『ハーバード・ビジネス・レビューBEST10論文』が発売になりました。本国アメリカのハーバード・ビジネス・レビュー誌は約100年の歴史を誇り、その間に掲載された論文の数はおそらく5000本を超えるでしょう。本書は、その中から厳選された10本の論文が掲載されています。
5000本から厳選されただけあって、ドラッカーやポーターなど同誌を代表する著者の論文が並んでいます。また時代や業種を超えて通用する理論の凄味を実感できます。たとえば、ミンツバーグが40年前に執筆した「マネジャーの仕事」では経営者が日々、郵便物の処理に膨大な時間を費やしている様子から「経営者の仕事の本質」を描いていますが、これは郵便物を現在のメールに置き換えて読むと見事に普遍的な状況が浮かび上がってきます。
そして、この本を読んでいて気づいたのは、経営学として確立された理論は、成功から出来上がった法則か、失敗から得られた教訓かのいずれかである、ということです。