顧客が期待する関係を
企業はいかに築くのか

 洗練された顧客データ分析ツールの恩恵を受け、マーケティング組織はついに、消費者とブランドの間にかねてから存在する関係性を顧客別に管理できるようになった。この新たなパワーには、かつてない課題も伴った。いまや消費者は企業に対して、自分がどのような関係性を求めているかを理解し、それに沿った対応を期待しているのである。つまり、関係性の当事者としての責任を果たすよう望んでいるのだ。しかし残念ながら多くのブランドはこの期待に応えていない。

 関係性を管理するためのCRMソフトウエアに、年間で総額110億ドルもの投資がなされているにもかかわらず、多くの企業は顧客との関係をまったく理解していない。関係性の知能指数(RQ) が欠如しているのである。顧客との関係性は多様だという事実を見過ごし、どうすれば絆を強めたり、関係のあり方を変えたりすることができるのか、わからずにいる。

 性別、年齢、収入、学歴といった単純な属性データを収集して購買履歴と突き合せ、収益性に応じて顧客をセグメント化するのはお手のものかもしれない。しかしこのやり方は、顧客との関係をサービスではなくモノを売る視点からとらえている。いまだに多くの企業が、顧客を特定のつき合い方を望む個人としてではなく、アップセリングやクロスセリングを通して収益を引き出すべき資源と見なしている様子がうかがえる。