筆者の1人ケイティは最近、ある不動産取引の際にこのことを実地に検証する機会があった。冷淡でこちらのやる気をそぐような郡の職員たちと何回か電話で話したあとで、ケイティは都市計画・区画指定局を直接訪ねた。そこで、認可の範囲を逐一尋ねて相手をいらいらさせる代わりに、規制にどう対処すればよいか助言を求めてみた。すると職員は、ケイティが自力ではけっして得られないような内部情報とアドバイスを惜しみなく与えてくれたのである。
貴重な情報をくれた職員にケイティが礼を言うと、彼女は胸の内を吐露した。役所の区画指定が人々の希望や夢をしばしば妨げてしまうことに、実はうんざりしているのだという。ケイティから謙虚に専門的アドバイスを求められたことで、彼女は元気づけられた。そのお返しに、困難な状況にあったケイティを手際よく導いてくれたのだ。
2.助言を求めれば、相手はあなたの視点に立てる
あなたが一番最近、だれかに助言を求められた時のことを思い出してほしい。おそらく頭の中で無意識のうちに、相手の立場に立って、相手の視点から見える世界を想像してみたはずだ。我々の研究によれば、相手の視点をとらえること(perspective taking:視点取得)には大きなメリットがある。理解が深まり、交渉でもクリエイティブな解決法を見出す可能性が高まるのだ(英語論文)。
別の研究で我々は、人事考課のシミュレーションを行った(英語論文)。すると、パフォーマンスが低い従業員でも、上司に助言を求めることで、上司の視点取得を促進することができた。それによって、厳しかった評価がより協力的なものへと変わり、昇進の推薦を受ける可能性は実に2倍近く高まったのである。