対立する相手を味方につける、単純な方法がある。「アドバイスを求める」という行為によって、相手から好意、共感、支持の3つを得られるという。交渉ごとや信頼構築に役立つ、そのメカニズムとは?


 外科手術の法外な請求書、いきり立った不動産開発業者、恐怖の人事考課。この3つに共通していることは何だろうか。いずれも、ある単純な行為によって事態を軽減することができる。それは「助言を求める」という方法だ。

 私たちは毎日、あらゆる物事について助言を求めている。街で最高のハンバーガーを出す店はどこか。同僚との厄介ごとをどう扱うべきか。しかし、アドバイスを求めることにどれほど効果があるかを正確に理解している人は多くない。助言を乞えばいままで知らなかった情報を得られるが、その他にも意外なメリットがあるのだ。

1.助言を求めれば、相手はあなたへの好感度を高める
 19世紀イギリスの作家アーサー・ヘルプスは、次の名言を残している。「人はだれでも、自分に助言を求めてくる人の見識を高く評価する(We all admire the wisdom of people who come to us for advice.)」。だれかに助言を求められるのは、基本的に嬉しいことである。自分の意見や価値観、経験が暗黙のうちに支持されていると感じるからだ。しかも、上下関係においては双方に有効である。部下は上司に知見を求められれば嬉しくなり、権限を認められたように感じる。上司も、自分の権限や経験に敬意を表し助言を求めてくる部下を歓迎するだろう。

 テキサス大学教授で心理学者のジェームズ・ペネベーカーの研究によれば、自分に対する仲間の好意を獲得するには、相手に質問をして「話をする喜び」を経験してもらうのがよいという。このことは非常に重要だ。なぜなら研究によれば、自分の好感度を高めることは、能力を多少伸ばすよりもキャリアにプラスとなるからである(本誌2005年11月号「『愛すべき愚か者』と『有能な嫌われ者』の活用」を参照)。