彼が「情報革命の考えは創業1日目から変わっていない」と言うように、創業時から一貫して一つのことを言い続けている。それは次の言葉である。「情報革命のインフラの提供者になりたい」この言葉こそが彼の方法論そのものを表している。われわれ人類は農業革命、産業革命に続く「第三の波=情報革命」という大変革のうねりを経験しつつある。ドラッカーは最後の著書『ネクスト・ソサエティ』で、「情報革命は始まったばかりであり、まだ黎明期にある。20~30年後に、今誰も想像できないようなITを使った暮らしをしているに違いない」と言い残している。

 情報革命を担うのは誰か。それはいつの世もベンチャー企業である。大企業は過去に蓄積した資産を引きずっているので動きが鈍い。その資産を無価値にするような革新に対して防衛的にならざるを得ない。これに対してベンチャーは失うものがなく、革新をリードして次の時代の主役を狙う。だからベンチャーは、革命のドライバーになるのだ。

 孫氏の言う「情報革命のインフラ提供者」とは、ベンチャーが育ちやすい環境を整え、革命を後押しするようなインフラの提供者という意味である。孫氏はその中枢を握ろうというのである。情報革命の行方は、思いもよらない方向に進む。「情報革命のインフラ」もそれに応じてシフトする。したがって孫氏も、その時代に最もふさわしいインフラに柔軟に乗り換えている。

ヤフーを育てた2つのインフラ

 孫氏は30歳半ばに、大勝負を賭ける。1994年に株式上場し、大量の資金調達に成功すると3,000億円を超える巨額買収に乗り出すのだが、そのうち800億円で世界No.1のIT見本市会社コムデックスを買い、全米No.1のパソコン雑誌を発行していた出版社ジフ・デイビスを2,000億円で買った。何故この二社を買ったかといえば、まさにこの二社が当時の情報革命のインフラだったからである。

 1990年前後にインターネットが普及を始め、米シリコンバレーには常識破りのアイデアをもつITベンチャーが大量に立ち上がった。当然、彼らはスタートアップのために資金を求める。また高い技術や販売力をもった企業と組みたがっている。しかし人脈がないために、なかなかベンチャー・キャピタル(VC)やエンジェルたちの目に留まらず、起業資金にありつけない。サポートも得られない。