フィードバックは個人と組織の成長に欠かせない。しかしその対人力学によって、受け手は多大なストレスにさらされるのも事実だ。フィードバックの円滑な受容を促すために個人と組織が実践できる、3つの方法を紹介する。

 

 企業の管理職にコーチングを行い、スタンフォード大学経営大学院でも講師を務める私は、仕事柄「フィードバックを効果的に提供するスキル」の向上を支援する機会が多い。これは命令型の伝達が逆効果となるフラットな組織でも、あるいは上層部や同僚に影響を及ぼして好ましい関係を築くことが求められる階層型組織においても、等しくリーダーにとって必須のスキルだ。このテーマについて私は自分のサイト、HBR.orgの記事(「フィードバックをうまく機能させる4つの要締」)、そしてHBR発行のアンソロジー(HBR Guide to Coaching Your Employees)の中で詳述してきた。

 しかし最近、スタンフォード大学出身で同僚のアナマリア・ニーニョ・ムルシアとのやり取りをきっかけとして、私は別の重要な側面を見落としていたことに気がついた。それは、フィードバックを効果的に「受け止める」スキルである。

 私たちが最初に認識すべきなのは、フィードバックを受けることはそもそもストレスを伴う行為であるという事実だ。シーラ・ヒーンとダグラス・ストーンは、HBR論文「成長する人はフィードバックを上手に受け止める」の中でこう述べている。「自分の成長にはそのフィードバックが欠かせないとわかっていて、自分の成功を望んでこその指摘であると、その人物を信頼している場合でさえも、心理的トリガー(感情を刺激する要因)が作動することがある。誤解された、敵意を向けられたと感じるかもしれないし、時には自分を脅かされたと思うかもしれない」。これはフィードバックの習慣が定着している組織でさえ当てはまり、めったに行われない組織ではなおのこと受け手のストレスは大きくなる。

 人類は、脅威に対する反応を進化させてきた。対立や衝突を認識した時に、一連の生理学的、感情的、認知的な現象が引き起こされる。それらはしばしば「闘争・逃避・硬直」反応と呼ばれる。神経科学に関する近年の研究によれば、私たちの脳と身体は、対人コミュニケーションにおいて特定の状況に置かれると、物理的な安全が脅かされている時と同じように反応するという。心理学者はこれを対人的脅威(social threat)と呼ぶ。

 エグゼクティブ・コーチのデイビッド・ロックは、脅威を引き起こしやすい対人力学を特定するために、脳神経科学と対人関係に関する研究を広範に調べ、「SCARFモデル」を確立した(英語文書)。対人関係に大きく作用するこれら5つの力学は、典型的なフィードバックのやり取りにおいても驚くほど顕著に見られる。