突然スピーチやコメントを求められると、何をどう話すべきか思い悩んでしまうものだ。しかし数分でも準備する時間があれば、5つの鉄則を用いてうまく話せるようになるという。ポイントは構成、要点、聞き手、話し方ではなく内容、そして簡潔さだ。

 

 人前で話すことが死ぬより怖い、と思っている人は少なくない(あるアンケート調査によれば、スピーチへの恐怖は死への恐怖を上回ったという) 。ビジネスパーソンも、顧客との商談や会議室や演壇で、その恐怖を数えきれないほど味わっているだろう。特に、いきなり話をするよう頼まれて、準備する間が十分にない場合、そこからじわじわと苦痛に満ちた時間が始まる。

 ビジネスシーンでは、即興で話せることは必須能力の1つである。投資してくれそうな相手に「エレベーターピッチ」で(エレベーター内で話すほどに短時間かつ簡潔に)自社を売り込む時や、夕食会の最後に「営業部にメッセージを」と頼まれた時など――ほとんど準備なしに話を迫られる場面は多々あり、今後もなくならず、多くの人々を怯えさせる。

 そうした状況に私が慣れることができたのは、大学時代に人前で話す技術を競う「弁論術」(forensics)に取り組んできたおかげである(語源は「公開法廷で/人前で」を意味するラテン語のforensis)。弁論術で私が特に好きだったカテゴリーは「限定的準備」で、1分から30分程度の準備だけで5~7分のスピーチを行うというものだ。この取り組みを通じて学んださまざまな教訓は、その後仕事においても多くのメリットをもたらしてくれた。新卒の頃にコンサルティング会社で受けた、いくつかのケース面接を無事にクリアできた。上司や役員から厄介な質問を受けた時も、上手く対処できた。大学の授業や新人アナリストの研修会でコメントを求められた時も、切り抜けることができた。

 私が学んできたそれらの教訓は、どんな立場の人にとっても役に立つはずである。その一部を以下に紹介しよう。