神田 いま、日本は中国や韓国と政治的な争いが続いています。日本の交渉術はどのように評価しますか。

ダイアモンド 具体的な内容を知る前から一つ言えることは、争っているということは十分な交渉をしていない、ということです。双方が希望することを話し合って知ることで、なぜ問題が解決できないのかまったくわかりません。私に争いの内容を説明してください。

神田 竹島の領土問題や靖国神社参拝に関する問題などがあります。これは歴史上の解釈の違いに起因しています。

ダイアモンド 私ならこう考えます。国民を養うことや地球温暖化など、いますぐに対処しないといけない問題が山積みだ、と。そもそも、過去のことに縛られるべきではありません。「われわれを非難しておもしろいですか。それは良かった。さて、貿易について話したいのですが……」というような態度を取るべきです。

過去を争うのは、いまやるべきことからの逃避

神田 昌典(かんだ・まさのり)
経営コンサルタント・作家
上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士。大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済部に勤務。戦略コンサルティング会社、米国家電メーカーの日本代表として活躍後、1998年、経営コンサルタントとして独立。コンサルティング業界を革新した顧客獲得実践会(のちに「ダントツ企業実践会」、現在は休会)を創設。同会は、のべ2万人におよぶ経営者・起業家を指導する最大規模の経営者組織に発展、急成長企業の経営者、ベストセラー作家などを多数輩出した。1998年に作家デビュー。現在、株式会社ALMACREATIONS代表取締役、公益財団法人・日本生涯教育協議会の理事を務める。

ダイアモンド 街頭で抗議活動をしている人々に、抗議している暇があったらなぜオフィスで解決策を探るための調査活動をしないのか、と聞いてみたい。抗議活動が有用な結果をもたらすことはありません。正しい行動を取っている人は誰ですか。目標は何ですか。街頭で声を上げていい気分になることが目的ですか。もしくは、実際に変化を求めることですか。

 つまり言いたいのは、過去のことで争うのは、本当にやるべきことから逃れるための行動だということです。経済の立て直し、減税や環境問題など、取り組むべきものはあります。

神田 早い段階でこの交渉術を身につけて育った大人が国際舞台で活躍する政治家になれば、より良い未来のために協力するためにはどうしたら良いか、という議題ばかりになりますね。

ダイアモンド それを伝えるために、私は日本や世界各国を飛び回っているのです。実際に伝えることが変化をもたらしています。私が関わった争議が解決したケースも多々あります。

神田 先生が提唱する新しい交渉術が当たり前になるには、どれくらいの時間がかかりますか。

ダイアモンド そう簡単にはいきませんが、少しずつそうなるでしょう。でも、変化は確実に必要です。