2.新しい分野を開拓する
 新人の場合、新しいアイデアやチャンスの実現がどれほど難しいか(あるいは不可能か)わかっていないため、躊躇せず新たな分野を模索する。また、新人は成功へのプレッシャーを感じていて逃げ場もないので、工夫して急場を凌いだり、臨機応変に対処したり、基本的なニーズに立ち返ったりして、大胆なプロジェクトをやり通そうと試みる。

 オンラインでの評判管理を支援するレピュテーション・ドットコムのCEO、マイケル・ファーティクは、新任の事業開発スタッフに対し、営業プロセスの始め方や取引の規模について、一切指示を出さない。ファーティクは言う。「新人は事情に通じていないので、いきなり相手組織のトップと話をしようとすることがよくあるのです。その結果、経験豊かなスタッフよりもはるかに大きな取引をまとめてしまうことも少なくありません」

 だれをもって困難な課題に立ち向かわせるか、あるいは前例のないチャンスをつかませるかと思案しているマネジャーは、新人に賭けてみるのがベストかもしれない。

3.イノベーションを加速させる
 新人は短期間で多くのことを学ばなくてはならないが、力量不足をよく自覚しており、早く一人前になりたいと願っている。そのため、速やかに結果を出すことが少なくない。我々の比較研究によれば、新人が成果物をタイムリーに出す傾向は、経験豊富な従業員に比べて60%も高い。新人はデータを集めて状況を調べている間は慎重だが、いったん始動すると迅速に動く。つまり、リーンな(限られたリソースで大きな成果を狙う)、あるいはアジャイル(機敏)な開発プロジェクトに向いているのだ。

 イーベイは新人研修のプログラムを見直して、新人たちに会社の概要を教えるだけでなく、ただちに貢献させようと試みた。すると驚くべき成果が上がった。2013年に採用した新卒社員たちに、アイデアをためらうことなくどんどん出すよう求めたところ、最初のわずか数カ月間で特許のアイデアを既存社員よりも平均25%多く出し、正式な特許申請にこぎ着けた割合も多かったのである。

 新しいアイデアの創出、実験、新機能の迅速な提供、顧客からの迅速なフィードバック――こうした目的のために、新人を使ってみてはどうだろう。

 新人は、大方の期待をはるかに超えて有能である。基礎的なトレーニングに甘んじさせるよりも、すぐに何かをやらせ貢献させてみよう。新人は、さほど管理を必要としていない。ゲームに参加させ、正しい方向性を示し、のびのびとプレーさせることが必要なのだ。

 最後に一言。私が「新人の賢さ(rookie smarts)」と称する力は、だれにでも発揮できる。競争のルールを変える革新者は、チーム全員に必要に応じて新人のマインドセットを持つよう徹底させる。年齢やキャリアにかかわらず、新人としての強み――専門家を動員し、新しい分野を切り拓き、イノベーションを加速させる能力――を発揮させるのだ。


HBR.ORG原文:Why Your Team Needs Rookies October 2, 2014

■こちらの記事もおすすめします
フェイスブックの奇跡の10年から学ぶ、スケールアップの教訓
GE流、中途採用者の育て方

 

リズ・ワイズマン(Liz Wiseman)
企業幹部にリーダーシップ教育を行うワイズマン・グループのプレジデント。アップル、ドバイ銀行、ナイキ、ツイッターを始め世界中にクライアントを持つ。2013年、Thinkers50により「最も影響力のある経営思想家50人」の1人に選出。著書にRookie SmartsおよびMultipliersがある。