UberとAirbnbは新たなタイプのデジタル企業の先駆者だ。イーベイやクレイグスリスト(地域情報を提供するコミュニティサイト)のように、企業がユーザーに干渉しない従来のオンライン・マッチング市場とは様相がまったく異なる。たとえば、価格設定の管理(Uber)、ホストの近隣住民から意見を募るホットライン(Airbnb)、サプライヤーズ・クレジット(Uber:車を購入し専属運転手になることを望む人へのローン優遇)、24時間体制の専属の「信頼と安全」チーム(Airbnb)などの業務がある。
通常の企業が持つようなケイパビリティを提供することは、両社にとって重要だ。なぜなら両社を支えているのは、質の高い、顧客を重視した、ブランド化されたサービス体験の提供だからである。しかしどちらのプラットフォームも、ゲストを宿泊させたり客を運んだりするための資産(アパートや車)を、所有はおろかリースすらしていない。なおかつ、サービス提供者(ドライバーやホスト)を1人も雇っていない。このビジネスモデルはデジタル上のフランチャイズのようにも見えるが、サービス提供者に委ねられているオーナーシップと権限ははるかに大きい。
ブランドの下に約束されたサービス体験をたえず提供していくには、プラットフォーム文化を発展させて提供者たちに伝えることが不可欠である。サービス提供者に求められるケイパビリティを、文化によって明確にして適切な行動へと導くのだ。では、両社のプラットフォーム文化はどう違うのだろうか?
Airbnbが注力しているのは、コミュニティの形成、連帯感の醸成、ベスト・プラクティスの普及啓発であると思われる。同時に、前述の集会では良いサービス提供者になる方法をホストに教える多くのセッションを行っている。またホスト同士で知識を共有するグループ活動を主催。その活動はモバイル・アプリと連動し、ホスピタリティの基準とガイドラインを組み込んでいる。他にも、ホスト同士が情報交換するための出会いの場としてミートアップを提供。コミュニティと連帯感の重視は、「どこでも居場所がある」という同社のブランド戦略を鮮明に表している。3人の共同創業者は常に世界中の主要ホストの家を訪ねて宿泊している。これはホストにとって、Airbnbに対する忠誠心を著しく高める体験になるだろう。
Uberは対照的に、自社のプラットフォームとサービス提供者(登録ドライバー)との間に距離を設けているかのようだ。料金の変更を本部が管理し、サービス提供者に相談なく一方的に変更を通知する。コミュニティの形成は優先事項ではない。Uberのドライバーが大挙して集まるのは、コンベンションよりも抗議集会のほうが多い。アメリカのみならずヨーロッパ各地で、現地のタクシー運転手がUberのサービス停止を規制当局に求め集会を頻繁に開いていることを考えると、何とも皮肉な話である。2014年10月にはUberのドライバーは複数の都市で一斉ストライキを行い、手数料と機器使用料の値上げに抗議した(運輸業界における労働者の協同組合の歴史を考慮すると、将来Uberで労働組合が立ち上がることは明白だ)。
Uberの事業拡大の一因として、車のローン返済に苦しむドライバーを救ってきたことが挙げられる。ただしその返済は、ドライバーがUberから得た収入から天引きされる。自社のプラットフォームにドライバーを繋ぎ止めることはできるだろうが、コミュニティ重視どころか、サービス提供者を「支配」する文化を助長している。