私はほぼ2年間Uberを利用し、数千ドルを支払ってきた。2013年、私を乗せたドライバーたちは満足感と希望にあふれていた。いかにUberのプラットフォームが自分たちに力を与えたか、基地局の配車係の偏った采配から解き放たれ、本業の合間にお金を稼げるようになったかを語ってくれた。今日UberXのドライバー(Uberに登録した、自家用車を運転する一般ドライバー)は、力を与えられた小規模起業家のようにはとても見えず、疲れ切って悲観的で、マイナスの評価を恐れているようだ。その姿は監視下に置かれた労働者を彷彿とさせる。
ともに新興テクノロジー大手である両社の文化に、これほど際立った違いが生まれた要因は何なのか。両社とも需要と組織規模の急成長を経験し、その過程で似たような課題に直面してきたはずだ。また、シリコンバレーの投資家とウォール街の企業という資金提供者の種類も同じである。
文化が異なるのは、業種が違うからだろうか。たしかに、誰かの車の中に数分間いることと、誰かの家に数日間いるのとでは、サービス提供者と顧客の親密さの度合いは異なる。しかしUberの最大の競合であるLyft(リフト)のプラットフォーム文化は、Airbnbに近いようなのだ。
おそらくプラットフォーム文化も企業文化と同様、創業者によるところが大きいのだろう。Uberが遂げた急成長と、事業における徹底した集中はたしかに賞賛に値する。技術力もデータ・サイエンティストの質も素晴らしい。UberのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)は、トリップアドバイザーやオープンテーブル、スターバックスやヒルトンに至るまでのブランドがすでに採用しており(各社のインターフェースからUberを手配できる)、興味深い可能性を秘めている。しかしUberの経営陣が広めているプラットフォーム文化は時として、こんなふうに思わせる。サービス提供者という人間を除外し、テクノロジーの力によって人ではなく物を運ぶ無人自動車を走らせるという未来を描いているのでないかと。
新しい組織形態はAirbnbとUberに限らない。前述したリフトは3億ドルあまりの資金を調達し、同社と雇用関係にないドライバーを65以上の都市で何万人も抱えている。TaskRabbit(タスクラビット)は自社の名を冠したブランドの下、十分な審査と身元調査を受けた3万人あまりの「仕事人」を抱え、清掃や引っ越しといった手伝いを顧客に斡旋する。
共有型経済の新規参入企業とその予備軍には、この数年で約70億ドルに迫る多額のベンチャー・キャピタル資金が流入し、その額は増える一方だ(英語記事)。そこで各プラットフォームにとって重要となるのは、「ブランディング戦略」と「ワールドクラスのブランドを実際に創造すること」の違いを認識することだろう。前者はマーケティングと広報活動を通して行えばよい。後者を実現するためには、優れた製品体験やサービス体験を生み出し、その質を保ちながら長年にわたって提供していくことが求められる。
雇用関係にない人々にブランドの「顔」になってもらう必要があるこれらの新興企業にとって、適切なプラットフォーム文化の育成は持続的な成功のために不可欠なのだ。そしてプラットフォーム文化は、経営陣がつくりだす文化の影響を受ける――このことも認識しておかねばならない。
HBR.ORG原文:What Airbnb Gets About Culture that Uber Doesn’t November 27, 2014
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アルン・スンダララジャン(Arun Sundararajan)
ニューヨーク大学 スターン・スクール・オブ・ビジネス教授。デジタル技術によるビジネスと社会の変容を研究している。