●データのプライバシー
やむことのない侵害が、世間の信頼を損ない続けている。ピュー・リサーチセンターの調査によれば、アンケートに答えた米国民の91%が「消費者は企業による個人情報の収集と使用に対するコントロールを失った」ことに「同意」または「強く同意」している(英語記事)。サードパーティーに携帯電話を監視される恐怖であれ、オンライン決済の安全性に対する不安であれ、人々はプライバシーに関する懸念をますます強めている。そして矛先を、有害なハッカーではなく企業に向けている。2015年、企業はデータを有効な形で暗号化するよう努めるだけでなく、個人情報の保護に関する自社の取り組みを世間に示す必要がある。
1つ注目すべき新たな領域は、デジタルデータの利用許諾だ。弁護士はもうすぐ、個人データを法廷で使うようになる。2014年の終わりに、サードパーティーのアナリティクスを介して処理されたフィットビット(健康管理ウェアラブル)のデータが、法廷で証拠材料として(おそらく初めて)使われた(英語記事。人身傷害請求で、交通事故に遭った被害者の活動がどれほど損なわれたかを定量的に示すために、原告弁護士側が事故以前のフィットビットのデータを利用)。同じ頃、米連邦取引委員会はフィットビットがユーザーの個人データを広告会社に販売していたかどで捜査を始めている。デジタルデータの利用許諾と透明性の向上が、今後いっそう求められていくだろう。
●ブロックチェーン技術
ブロックチェーンとは、ビットコインの参加者が共有する取引記録だ。この技術によって、利用者のネットワークで(国や中央銀行の介入なしで)クリプト通貨の公開台帳が管理され、完全な匿名性も保証される。特定の誰かがデータをコントロールするのではなく、分散的に合意が形成されるシステムだと思えばよい。たとえビットコインそのものはブームにならなくても、ブロックチェーン技術は非常に有望だ。2013年末に米大手小売りチェーンのターゲットが起こした4000万人分のクレジットカード情報流出は、ブロックチェーンがあれば防げたであろうとする識者もいる。新興企業のブロックストリームは、ブロックチェーンを署名や認証が必要なあらゆる取引における世界的なプラットフォームにしようと計画中だ。その目的は、信用を必要としない決済――つまり買い手と売り手が互いに信用できなくても、エスクロー(第三者預託)や管財人のような仲介者に頼れる安全な取引に似たシステム――の提供である。
以上で挙げたテクノロジーの6つのトレンドは、2015年に何らかの形であなたの事業にも影響を及ぼすだろう。来たる破壊的変化に備える最善の方法は、それについてできるだけ多くを学び、その示唆を自社の人間と話し合い、社内で小さな実験をしてトレンドの実際の動きを読んでみることだ。
HBR.ORG原文:The Tech Trends You Can’t Ignore in 2015 January 5, 2015
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エイミー・ウェブ(Amy Webb)
デジタル戦略のコンサルティング会社、ウェブメディア・グループの創設者兼CEO。世界中の企業・組織に、近い将来訪れるテクノロジーとデジタルメディアの新トレンドをアドバイスする。ハーバード大学ニーマン・ジャーナリズム財団の客員研究員も務める。