どの国で生まれどの文化で働いていようとも、聞き手の思考様式に合わせたプレゼンができればよい結果につながる。以下に、国際的な仕事をする際の準備に役立つヒントを示そう。
●適用例第一(帰納的)の人と仕事をする場合
プレゼンテーション:要点を真っ先に話すことにより、主張を効果的に伝える。具体例、ツール、今後のステップの紹介に時間を割き、主張の背景にある理論や概念の説明には、さほど時間をかけない。概念的な議論を行う必要に迫られることはあまりないだろう。
他者を説得する時:他の具体的な成功事例を挙げる。
指示を与える時:「why(なぜ)」よりも「how(いかにして)」に重点を置く。
●原則第一(演繹的)の人と仕事をする場合
プレゼンテーション:結論と事例を述べる前に、持論の根拠となる概念を説明・立証する。根本概念についての質問や議論のための時間を十分にとっておく。研修のセッションは、帰納的な人たちが相手の場合よりも往々にして時間がかかる。
他者を説得する時:背景にある原理を示し、議論を歓迎する。
指示を与える時:「how(いかにして)」だけでなく、「why(なぜ)」も説明する。
近年私は、ヨーロッパと南北アメリカのあらゆる地域出身の人々にプレゼンを多数行っている。全世界の人々が私と似た思考様式を持っているという考えは捨て、聞き手に合わせるよう、できる限りの手を尽くしている。ニューヨークの人たちにプレゼンを行う場合には、ツールのバックボーンとなる研究についてはほんの少しだけ時間を割く。だがモスクワに行く時には、入念に議論の準備を固める。主張の根拠となるパラメータを提示し、十分に議論を交わしてから結論を述べる。こうしないと、モスクワの聴衆は疑心を抱きかねないのだ――「この女性は何を考えているのだろう……我々は愚かで、何でも鵜のみにするとでも思っているのだろうか」と。
相手の関心を引きつけたい時や、情報を伝え、説得し、納得させたいと思う時、何を話すかは重要だ。しかし、それをどのように説明するか、メッセージをどう組み立てるかによって大きな違いが生まれる。聞き手がアメリカ人でもフランス人でも、それは同じだ。
(訳注:メイヤーは自著The Culture Mapの中で、複数の国々を次のように大別している。観察結果を重視する国々(帰納的):アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスなど。原理を重視する国々(演繹的):イタリア、フランス、ロシア、スペイン、ベルギーなど。両軸の中間はブラジル、メキシコ、デンマーク、スウェーデンなど。)
HBR.ORG原文:Tailor Your Presentation to Fit the Culture October 29, 2014
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エリン・メイヤー(Erin Meyer)
INSEADの客員教授。異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学を専門とする。同校で企業幹部向けプログラムのディレクターを務める。