出来上がった、三者三様のアート

 そして全員の絵が描き上がったところで、作品を額に入れ、お互いに鑑賞します。モデレーターの長谷部さんが「楽しく描けましたか?」と聞くと、全員の手が挙がりました。みなさん、やりきったという満足感にあふれ、手指を使って描く新鮮な体験に刺激を受け、目が輝いています。

 まずは、本間さんの絵に寄せられたコメントから見てみましょう。

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本間浩輔さん

“アスリート” “情熱” “挫折” “強さ”という感想を書いた加納さんは「線がガクガク直覚的なのが、私と対照的だなと思っておもしろかったです。赤色のところが血のように見えて、身を削って何かを体験し、伸びていくような強さを感じました」というコメント。なんだか、青春のワンシーンのようなイメージです。宮坂さんからは「“アスリート” “情熱” “挫折” “強さ”って、少年ジャンプみたいだね(笑)」という合いの手が。Kuniさんからは、「僕は緑色の部分が木に見えました。そして、赤や黄色、オレンジは木を成長させるための刺激。その刺激を吸収して上に伸びていくイメージです」というコメントがありました。

 じつは、これが作者の意図をぴったり読み取っていました。作者の本間さんが働くうえで大切にしていることとして書いたのは「成長」。まさに、木でそれを表現しようとした絵だったのです。

「絵を描き終わって、思い出したことがあります。高校生の頃、5月の新緑の時期に、授業中ずーっと外を眺めていました。緑がきれいで、生命力があって……。成長、生まれ変わる、ということをイメージした時にやっぱり元になるのはそのとき見た緑のパワーだったんです。なので、タイトルは『高校時代』にしました」(本間さん)

 言葉を書かなくても、描きたいイメージが伝わっているのがわかります。そして同じテーマでも、まったく違うイメージが生まれてくるのが、アートのおもしろいところです。加納さんの絵は、本間さんとは対照的にやわらかな円がたくさん描かれています。

 本間さんのコメントは“にじみ” “多様性” “イメージの世界” “光”。「ぜったい僕には出せない、多様性というものを感じました。あとは、いい意味でにじんでいて、自分一人で何かをするのではなく、人と人が重なりあって、何かをつくっていくのをイメージしているのかと思いました」。

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加納美幸さん

 宮坂さんからは“相互の影響” “多様さ” “まろやかさ” “リズム感” “ゆったり”というコメントが。「それぞれの丸が人みたいに見えました。境界をはっきりさせず、影響しあっている。ゆったりと波間にただよう泡が、離れては近づく、そんなイメージを受けました」。

 さて、作者の加納さんの意図はどのようなものだったのでしょう。

「働くうえで大切にしていることは、『チームワーク』『優しさ』『個性』です。テーマは“融合”にしました。それぞれ曖昧で不確かな存在が支えあって生きるようなイメージです。それに加えて、ちょっとワクワク感を出したくて、バブルを描きました。最後に紙を回してみて、一番バブルが上がっていくように見えた角度を選びました。最終的なタイトルは『ヒューマン』です」

 タイトルが発表されたとき、宮坂さん、本間さんからは、「加納さんぽいねえ」という声があがりました。自分らしさを出そうとしなくても、絵には己の姿が映し出されるものなんですね。

 さて、最後は宮坂さんの番です。皆さんから出たコメントは、“すくすく” “のびのび” “自然体” “宇宙” “枠にとらわれない” “オーガニック” “変化” “テニスボール” “明るさ” “飛行機” “はっきり”。さて、どんな絵ができあがったのでしょうか。

 宮坂さんの描いた絵、それに込めた思いは、DAIMONDハーバード・ビジネス・レビュー5月号に掲載されています。ぜひご覧ください。

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宮坂学さん