その結果、マインドフルネスを体験したグループは、対照群よりも人種と年齢への潜在的偏見が少ないことがわかった。理由の1つは、ネガティブな連想(黒人=悪い、高齢=悪い、など)を無意識に発動する傾向が低かったためだ。この結果は、マインドフルネスによって過去に形成されてきた連想への依存度が下がるという従来の研究とも一致している。しかし、研究者らは別の発見に驚かされた。マインドフルなグループは対照群と比べて、顔の違いを明確に認識できなかったのだ。ここから示唆されるのは、黒人や老人の顔を無意識に「悪い」に結びつける頻度が少ない状態では、人種や年齢を明確に識別しなくなるということだ。
マインドフルになるだけで潜在的偏見を抑制でき、ネガティブな連想を弱められるとすれば、それはさまざまな悪影響を防ぐためにも役立つだろう。事実、潜在的な外集団バイアス(自分が属さない他の集団を否定的に見ること)があると、シミュレーションで黒人の容疑者を射殺する頻度が増えたり、テレビゲームで攻撃的になったりするという研究もある。
潜在的態度は顕在的態度よりも、職場におけるネガティブな振る舞いの予兆となる。たとえば採用時の差別的な判断や、外集団のメンバーへの不信や敵対的なしぐさなどは、潜在的態度にすでに色濃く表れている。
ルーキーの説明によれば、「潜在的偏見が強い人の傾向として、偏見の対象と距離を置き、アイコンタクトをあまりせず、そわそわしたり、返事が素っ気なかったりする。そして不快感を言葉ではなく動作で示す」。しかも、偏見のないコミュニケーションを取りたいと意識している場合でも生じてしまう。
それでは、マインドフルネスを高めるにはどうすればよいのだろうか。ルーキーが言うように、仕事中でもそれ以外でも、私たちは無関係のことを考えていることが多々ある。やることリストを思い出してみたり、昨晩のデートをふり返ったり、テレビドラマ『ウォーキング・デッド』のハチャメチャな展開について熟考したり、今日の夕飯のメニューを思案したりする。さまよえる思考を沈め、集中を取り戻すには練習が必要だ。しかし多忙な人でも、いつどこででも目の前の瞬間に集中できる初歩的な方法はある(「会議中でもマインドフルになれる2つの簡単なテクニック」を参照)。
人の判断やとっさの反応は、過去の経験に影響を受けている。そのことを私たちは十分に理解しておらず、気づきさえしないこともある。肝心なのは、この事実を受け入れて過去の連想に依存しない方法を見つけることだ。
HBR.ORG原文:Mindfulness Mitigates Biases You May Not Know You Have December 24, 2014
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ニコール・トーレス(Nicole Torres)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のアシスタント・エディター