偶然出会った見込み客に数十秒でプレゼンする「エレベーターピッチ」の秘訣を、北米トップ・メンタリストが伝授する。プレゼンの内容よりも、まず「相手の関心を引き続けること」に時間と労力を使うべきだという。

 

 エレベーターピッチといえば、人脈づくりに励む人々が好んで使う方法だ。ある種の通過儀礼でもある。次のような状況はお馴染みだろう。あなたが上階行きのエレベーターに乗ると、次の階でドアが開き、誰かが乗ってくる。それはぜひとも顧客になってほしい人物だった。ちょっとした世間話が始まり、相手が「お仕事は何ですか」と尋ねてくる。あなたに与えられた応答時間は、エレベーターにいる間だけ。その20秒間で相手に興味を持たせるには、どのように応じたらいいか。答えは簡単だ。エレベーターピッチの本題に入る前に、相手を引きつければよい。

 本記事では、私のエレベーターピッチをそのまま再現し、成功する話術の秘訣を伝授しよう。相手が「お仕事は何ですか」と尋ねてきたら、私はこんなふうに始める。

「国際ボディービルディング・チャンピオンである以外に、ということですか?」(私は身長178センチ、体重は最大でも61キロで、アリを踏んでも殺せない。私が国際ボディービルディング・チャンピオンでないことは痛いほど明らかだ。)

ここでたいていの相手は笑う。私も笑う。それからこう続ける。

「ええと、人々がコミュニケーションを取る方法は、メールやテキストメッセージやソーシャルメディアばかりになってしまった感がありますよね?」

「ええ」

「私たちはかつてないほどつながっています。それなのに……かつてないほど分断されています。そこで私はマネジャーの皆さんに、本物の連帯感を築く秘訣を教えています。すぐに成果が出る方法です」

「どのように教えているのですか」(あるいは「どういうことですか」または「どのような成果ですか」)

「そうですね、例を挙げましょう。ある会社の経営陣は、社員と気持ちが通じ合っていないと感じて私に依頼してきました。それは経営陣の落ち度というより、単に正しいやり方を教わったことがないからですよね。そこで私は経営陣の保養所に行って、私が考案した4部構成の公式を教えました。今では社員の士気は上がり、生産性が38%向上しました。

 というわけで、私はこの公式をご存知でないマネジャーの方々をいつも気にかけて探しているのです。見分けるのは簡単です。彼らは自分のことをマネジャーというよりベビーシッターであるかのように感じています。『人の問題がなければ、この仕事はどれほど楽になるだろう』と。人材のマネジメントをしながら自分自身がしかるべき報酬を得るための仕事もこなすには、時間が足りません。本来、享受すべき時間と生活スタイルを失っていることに気づいてさえいないのです。

 私の職業は何かと聞かれれば、マネジャーの皆さんに人生を取り戻してあげることです。人生は短いのですから、アメリカ人の3人に2人が自分の仕事を嫌っている現状はあってはならない。そして私の予感ですが、あなたもそんなマネジャーの方々をご存知なのでは?」

 さて、上記のエレベーターピッチは明らかに、20秒をはるかに超えている。だが私が「20秒ルール」に賛成しないのには理由がある。