学生は、企業のホンネをどう見ているか

 昔から、「若者は時代を映す鏡」といわれます。音楽もファッションも、新しい流行をいち早く察知し、取り入れるのは若者です。一つひとつの現象に大きな意味をもたなくても、それらを集めて点と点を結びつけることで、社会の輪郭が浮き彫りになるものです。

 いまの学生のリクルートスタイルにも、時代が映し出されているとすれば、それは企業のホンネかもしれません。学生は企業が出す「募集要項」のみならず、様々な角度から多様な情報を仕入れています。先輩の経験や、友人の企業訪問の話など、いまやこのような談話を集めたサイトも盛んですし、SNSでのリアルな情報交換が行われています。偏った情報から「いびつ」な企業観を作り出している一面も否めませんが、それなりの真実もあります。

 変革人材を求むと企業が主張していても、学生たちが出した結論は、「身なりをきちんと整えて就活に挑むのが内定の近道」ということです。自分の個性を出して企業に見てもらうのはリスクが大きすぎる。ならば没個性と言われようと、標準的なリクルートスタイルで挑む方が成功確率が高い、と結論付けているのです。

 学生と企業との接点は実に多様で、多くのタッチポイントから学生らは企業のホンネをそのように、結論づけたのでしょう。もちろん例外もあるでしょうが、成功確率という意味では圧倒的多数の企業の振舞が、学生から見ると「変革人材を求めていない」と映っているのです。

 これは企業にとっても意外かもしれません。タテマエで「変革人材」を標榜しているつもりはなかったはずです。しかし、「ほしい社員」を見分ける際に、自社にいるこれまで「優秀だった人」に当てはめて学生を見ている可能性はないでしょうか。自分の物差しで測れないような人材を無意識に排除している可能性もあります。既存の枠組みで過ごしてきた人が、「枠組みを壊す」思考にシフトできたとしても、無意識のマインドまで変えるのは容易ではありません。

 企業で働く人は、学生のリクルートスタイルにケチをつける前に、自らが無意識に実践している行動規範を見直してみる。言葉より行動がより相手に伝わるもので、学生は企業の本当の姿を映す鏡になります。自らの行動を振り返り、時代が求める資質と照らし合わせてみることで、いま自分にあるいは企業に欠けていることが見つかるかもしれません。(編集長・岩佐文夫)